第50話 力が無いから


「空竜艇って言うんだ、凄いな」


空飛ぶ竜に船がついている感じだ。


なかなか豪華で、今俺がいる場所は立派な客室でフカフカのベッドのソファまである。


風呂やトイレもあるそうだ。


だから、俺は、この部屋でゆっくりしているだけで魔王城まで行ける。


「ドラキーナ、紅茶が飲みたいですわ。紅茶を入れて下さい…ですわ」


「私も紅茶…ついでにお肉、ソーセージも欲しい」


「あたいは、ハンバーグを用意してくれ」


「ほら、ドラキーナ、しっかりしなさい」


「ふざけているの?あたしはこれでも四天王…なぜ」


「ドラキーナさん、今貴方はこの中で一番弱いんですよ? さっさと働きなさい」


「うっ、エミリー、貴方はメイドでしょう? こういう時は貴方がやるもんじゃないの?」


「勿論、ドラキーナさん以外から頼まれたら、私がやりますよ!だけど皆がドラキーナさんに頼むんだから仕方が無いですよ」


「あっ、ごめんなさいですわ。ついこの中で一番弱いからドラキーナに頼んでしまいましたが…間違いでしたわ。すみませんエミリーお願いしますわ」


「…ドラキーナが弱いから悪い…だけど不器用そうだから…エミリーに頼む」


「あはははっゴメンね、魔物の性なのか一番弱いドラキーナに頼んじゃった…本当にゴメン」


「どうせ…あたしは弱いですよ…ハイハイ解りました」


「ドラキーナさん、その投げやりな態度はなんですか? 邪神様の前ですよ? そんな態度していると…(ボソッ 殺しちゃいますよ?)」


「ひぃっ…解ったよ」


「エミリー、悪いけど給仕はエミリーがやってくれないか? 頼むよ、得意なんだろう?」


「勿論ですよ!心得ました。邪神瞳様、すぐに完璧に仕事させて頂きます」

すごいなエミリー。


まるで加速装置でもついているかの様な速さで動き、仕事を片付けていく。


気がつくと、全員分の紅茶とお菓子を用意し…頼まれていたソーセージにハンバーグ迄準備した。


その間、どう考えても5分と掛ってない。


しかも、何も指示しなかった俺の前には紅茶とケーキがある。


本当によく気がつくな。


「ありがとう」


「いえ、私は邪神瞳様のメイドですから、この位当たり前です!」


「ちょっとエミリー、あんであたしの紅茶が床に置いてあるの!」


「テーブルに椅子は4脚…貴方と私が床です…当たり前じゃ無いですか?」


「だからって…もう良いわ…台所で飲むから」


「いや、そんな事しないで良い…テーブルと椅子なら用意するから…」


便利だな、全知全能…一瞬でイメージした椅子とテーブルが目の前に現れた。


「ドラキーナさん…邪神様に気を使わせるなんて最低ですよ?」


「エミリー、あんたが悪いんじゃない」


「二人ともいがみ合わないでくれ、気が気じゃない」


「邪神である瞳様が言うのであれば…そうしますわ、ほらドラキーナ仲直りです」


「解ったわ」


「解ったわ?」


「ごめん、ごめんってエミリー、そんな怖い顔しないで」


「これからはちゃんと口を謹んで下さいね」


「うっうっ、エミリー、解りました」


オーガ達に聞いたけど『魔物や魔族は力が全て』そう言っていたけど、ドラキーナはこれでも四天王だ。


この扱いは少し可哀そうな気がした。


「皆、もう少しドラキーナにも気を使ってあげてくれ、これでも四天王だし、魔王からの使いなんだからな…オーガの集落の時みたいにお客として扱って欲しい」


「瞳様がそう言うなら…そう致しますわ」


「そうする…」


「そうか、オミソって扱いで良いんだな?」


「私はメイドですから、ご主人様が頼まれるならそうします」


「私なんか…」


よく見ると目には涙が溜まっていて、ドラキーナは走って部屋から出て行った。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る