第13話 外出
次の日、聖女 宇佐川聖子の失踪は事件になっていた。
骨すらも砂の様に砕いて窓から撒いたそうだから、絶対に見つかる事は無いだろう。
この世界に科学調査は無い。
前の世界なら科捜研が出てくるかも知れないが、この世界には無い。
尤も科捜研は逆に吸血人形や肉吸人形なんて存在を知らないから、まぁこちらも迷宮入りだな。
もしかして、鑑定をされるかと思い警戒はしていた。
鑑定されれば『俺だけレベルが上がっているからバレる』そう思っていた。
隠ぺいは唯一レベルだけは無理らしい。
だが、結局、鑑定はされなかった。
『神の祝福に人間の分際で優劣をつけるなど言語道断である』
これのおかげだった。
その昔『祝福』で貰った力の差で国単位で差別した事があり、それを神が怒り、召喚をさせない事が起きた…その為、四職以外の『鑑定』はしない。
そういうルールが定まったとの事だった。
それに…
『異世界転移者は自分達の味方』
そう思われているから、一切疑う余地は無いようだ。
神の中に『邪神』が居る。
その事は意外にも知られて無かった。
まぁ、転移者で邪神を選ぶ存在なんて過去に居なかったんだろうな…
おかげで助かった事は確かだ。
その為、魔族が入り込んできて攫った。
魔族との戦いを悲観して逃げ出した。
その2つを考えていたようだが、流石に王城の中にまで魔族が入り込むとは考えられない事から、結局は『失踪』という事で話が終わった。
昨日、勇者を含む四職には俺達とは違い『魔王討伐』の話があったそうだ。
その話は詳しくは教えて貰えなかったが、莫大な褒賞とそれに伴う義務や責任、そして過酷さだったそうだ。
その結果…
『これからの責務に臆して失踪したのでしょう』
そういう事に納まった。
宇佐川聖子はもし発見されても、もう魔王討伐には加えずに教会に所属させ別の道を歩ませるそうだ。
案外、思ったよりは『考えてくれているのか?』そう思ったが…
勇者の旅立ちに間に合わないから…そう言う事なのだろう。
今日から訓練が始まる筈だったが、今回の事件の事で『全員のメンタルの事を考え』3日間の休みとなった。
この3日間は自由に過ごして良く、希望があればお小遣いを貰い王都の見学も可能との事だ。
此処に居ても仕方が無い。
勿論、俺は王都の見学をする予定だ。
しかし、本当に良いのか?
仮にも『聖女』が居なくなった状態で俺達に外出を認めるなんて事をして…
しかも護衛も居ないみたいだ。
尤も俺達は1か月の訓練を得た後は、それぞれの希望を聞きながら支援はするものの、後は自由らしいからこんな物か?
だが、同級生の殆どは宇佐川聖子の失踪にショックを受け外出をしていない。
だが、そんなのは俺には関係ない。
「外出をしたいのですが」
その旨を伝えるとあっさりと許可して貰えた。
しかも銀貨3枚の小遣いも貰えた。
これは前世で言う所の約3万円分に値するようだ。
◆◆◆
俺にはちょっとした希望があった。
それは美人に見えた三人の理由は解らない。
だが…テレビのニュースで見た、普通に見えた少女は『連続殺人犯の高校生』だった。
そう考えたら…ある種の犯罪者が美しく見えるのかも知れない。
そう言う事だ。
また、邪神や拷問人形である黒薔薇達が綺麗に見える事から…『殺人』それが、俺に『綺麗に見える』条件なのかも知れない。
だから…俺は奴隷商に向かってみた。
本来なら犯罪者が見たいと言えば済むが、流石に頼みにくい。
だからの奴隷商。
もし、予想通りなら『犯罪奴隷』が居るだろう…
奴隷商に着くと厳つい男が居た。
話掛けたが不機嫌そうだ。
「犯罪奴隷が見たい…あんた変わっているな? ガキが何を言っているんだ」
外出の際に貰った書類を一応見せた。
すると途端に態度が代わり…
「なんだ、異世界人の方ですか? そうならそうと言って下さい。犯罪奴隷じゃ無くエルフ族とか没落令嬢の奴隷を見ませんか?」
そう言うから…相手の言う通りに見たが…
凄く気分が悪くなった。
はっきり言うが、この目になる前に見た、ホラー映画の化け物の方が遥かにましだ。
もし、ミリタリーゲームの世界なら、間違いなくマシンガンで蜂の巣にしてやりたい位…の化け物にしか見えない。
桁が違う…此処迄の悍しい化け物に見えた存在はそうそう居ない。
「すいません、希望はやはり犯罪奴隷なんで…そちらを」
恐怖に耐えながらなんとか言えた。
「お客さん…変わっていますね」
そう言いながらも、案内してくれたが…駄目だ。
犯罪奴隷は、普段見ている存在より幾分かましだったが…
やはり、悍しく見えた。
簡単に言うなら…少しは真面な化け物。
『お金を出して買いたい』
そこ迄の存在じゃ無かった。
「案内をしてくれてありがとう」
それだけ伝えると俺は奴隷商を後にした。
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