第3話 必殺「等価交換」

私は、一角ウサギでさえ1人で倒せない。


そんな弱い私の前には、2メートルのオオカミ。


ここは推奨レベル50以上の高位ダンジョン10階。


ここで生き延びている魔物だ。


対して私は18歳でレベル8。


攻撃に使えるスキルを持つ子は、10歳で到達できる。


おまけに、文字通りの丸裸。



「オ、オオカミさん、見逃してくれないかな。私は大していいもんを食ってないから、まずいって」


ぐるるるる!


ずきっ。威嚇された。そう思った瞬間に、左肩が抉り取られていた。


オオカミが、噛んだんだと・・思う。


何も見えてない。


問題はそこじゃない。


肩の肉が削がれていた。


オオカミを見た。クチャクチャと肉を咀嚼してる。きっと私の肩ロースだ。


『超回復』


自動発動したスキルが肩を瞬時に治す。


真っ直ぐ立っていられる。けど、スキル発動まで、わずかなタイムラグ。すごい痛みが味わえる。


次は首、右の太もも。気付くと肉が抉れ、痛み。その繰り返し。


私がこんな場所にいる。きっと高ランクの冒険者と勘違いしてる。


だから、基本に忠実にヒットアンドアウェイを繰り返す。


カウンターパンチ。当たるわけなし。


傷はたちまち治る。


「これって・・オオカミからしたら、何度でもわいてくるご馳走?」


それに超回復もスキル。魔法もスキルも魔力頼りが基本。


そのうち魔力切れで詰む。


打開策がない。4回目のアタックを食らう。


あれ????


大きな異変に気付いた。


「手がすごく小さくなっている・・。まるで小さな子供だ。何が起こったの?」


160センチの私が、今は100センチの6歳児くらい?


縮んでいる。

やっと育ったBカップの胸もぺったんだ。


ピー。


今さらになって、スキルの説明か・・


頭の中のテロップ。


◇スキル『』。スキルオーブを手にした者が心から望んだものが当てはまる


◇ユリナは『超回復』を獲得


◇パッシブ、アクティブ、使用可。


◇『超回復』は他者にも使える


◇『超回復』は魔力に依存しない


◇回復に使う理論は「等価交換」


◇交換の材料は「有機物」なら何でも使用。用意していない場合は術者の体を使用する。


◇等価交換は瞬時に成立。アクティブ発動のみ。術者本人による命令による。


「なるほど魔力の心配はないのか。って、ダメじゃん!」


壊れた部分を体全体の組織を使って修復。


「だから、私縮んでる。 このまんまじや、小さくなって消滅だよ!」


ばぐっ。いでっ!


「「有機物」ってなんだよ。「等価交換」ってどうやるんだよ」


試すしかない。


怖い。けれど首を空けて待った。


オオカミの姿がブレた気がした。


今!


「等価交換!」


「ガアアッ」


オオカミの牙、右太ももに深々と突き刺さった。首じゃない。



パチッ。

バチィッ。


いきなり視点が高くなった。


オオカミの牙はもう足に食い込んでないし、今回は離れてくれない。


たけど。

今までのようなプレッシャーは感じない。


「なんかオオカミが小さくなった?いや、私が大きくなって、元の身長に戻ったんだ・・」



オオカミは、私の太ももにくっついたままだが、何かおかしい。



牙を振りほどいて離れたとき、異変が起きた。





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