第4話 コーダー、やらかす。
「見て見て~! すっごくかわいくしてもらった♪」
「うおお! 俺のもカッコいいじゃないか! やべえ、誰かに見せびらかしてえ!」
俺は、街まで一緒に連れてきてもらったお礼に、五人の同行者のステータスボードを修正した。情報を整理して、見た目をちょっとカッコよく整えただけだが、五人とも相当に喜んでくれた。きちんとデザインも勉強しておいて良かったと鼻が高い。
五人はこんな素晴らしい事をしてもらって申し訳ないからと、いくらかの金銭まで渡してきた。
「いや、俺はそんなにお礼してもらうような事をしていないぞ?」
流石に断ったのだが、どうしてもと言うので頼みごとをすることにした。
「そこまで言われたら、こういうのはどうだ? 俺はそこそこの大きさの街でこのステータスボードの装飾を仕事にしたい。仕事の
「そうだな、それくらいならお安い御用だぜ。何なら、
「うんうん、コーダはホント凄いと思う! だけど、こんな技術は絶対に安売りしちゃだめだよー!」
「そんな……俺、そんなすごい事してる?」
「「「「「してる!!!!!」」」」」
全員から詰め寄られる形で、俺はある意味無双スキルを持っていることに若干の不安を覚えた。何をやっても失敗しないスキルを併せ持つコーディング技術……この世界の構成を一部とはいえ書き直せてしまうなんて、実は相当チートではないだろうか。
「き、気を付けるよ、ハハ……」
苦笑いをしてお茶を
「ギルドに登録したいんですけど」
「どんなお店を開くんだい?」
教えて貰った商業ギルドのカウンターで、受付嬢ならぬ受付婆に事情を説明する。革新的で今までにない技術を扱うということで、理解が出来ないものはすぐに承認出来ないと言われた。
翌日、商業ギルド役員一同の前でステータスボードを修正してみせると、すぐに承認を得ることが出来た。更に、その場にいた役員全員が店を持ったら最初の客になりたいと申し出てくれた。商売を始める前から予約が取れるなんて、
宿屋に戻りベッドに仰向けに寝転ぶと、商業ギルドの名前の入った認証プレートをニヤニヤと眺めた。ピンクゴールドのプレートは高級感もあってちょっとカッコイイ。嬉しくて眺めているうちにいきなり眠気がやってきて、俺はそのまま眠ってしまった。
・・・・・・
「ハッ!」
目が覚めると、見たこともない薄暗い空間に俺は寝ていた。やたら柔らかいベッドだと思ったら、鳥の羽根を生やした女の
「どこだ、ここは? 俺は……?」
だめだ、寝てしまってから記憶がない。混乱する俺の前に現れたのは、漆黒の衣装に身を包み、巨大な羊のような角を持つ大男だった。赤く不気味に光る目が俺を凝視する。
「お前がコーダーか。我々魔族どころか、この世界全てを
「な、なにを言ってるんですか? あなたは、まさか魔王とか? そんなわけ……」
「我はこの世界の
「ま、魔王……均衡を保つために魔王が
「そうだ、その均衡を崩すお前がどんな存在か知るために、城まで来てもらった」
どうやら、俺がこの世界に
俺は、とっさにパソコンを取り出してこのページのソースを見る。「
「なんだ、その道具は! お前、何をしようとしている!?」
魔王が手を伸ばしたその時、俺は魔王の情報が書かれたソースを一旦非表示にした……つもりだった。
その場の全情報が非表示となってしまったらしく、俺以外の全て――魔王城も、魔族も、
「なんだよ、百発百中で失敗しないんじゃなかったのか?」
スキルは発動していた。本来は魔王だけを消す予定が、手元が狂って魔王城を非表示にしてしまった。だが、入力したコマンドには百発百中のスキルが発動し、間違いなく俺が非表示にした部分全てが目の前から消えてしまったのだった。
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