甘々な義理の姉二人に妹は子供扱いされて困ってます
コミコミコ
子供扱いしないで!
環境というのは唐突に、そして劇的に変わることがある。
きっかけはお母さんが再婚したことだ。あたしとお母さんは新しいお父さんの家で暮らすことになったのだが……
***
あたしの名前は
「…………」
まあそういうわけで、これから住むことになる家の前にいるんだけど……。
***
「ここね。インターホンは……」
ガチャッ!
深雪が呼び鈴を押す前に玄関のドアが開いた。中からは一人の女性が出てくる。
「あら?あらあら!もしかしてあなたが深雪ちゃん?」
そう言って彼女は嬉しそうな顔をして深雪のことを見つめてくる。
「はい。えっと……お母さ」
「冬花?どうしたのお……あ!深雪ちゃん来たんだ!」
家の奥からさらにもう一人の女性が現れた。話には聞いていたがどうやら二人がお父さんの娘さんらしい。
「その……初めまして!棚町深雪といいます!今日からよろしくお願いします!」
「ふふっ。私は姉の
二人は笑顔で自己紹介してくれた。姉妹だけあって顔立ちが似ている。姉の方が髪が長くて妹の方が短くカットされていた。
「ねえねえ!荷物はもう運んであるからいつでも住めるよお!早く入って入って!」
二人は深雪の手を取って家の中へと案内する。リビングに入るとそこにはダンボール箱がいくつか置いてあった。
「とりあえずここにある家具とか服は自由に使っていいわよ。もし何か足りないものがあったら遠慮なく言ってちょうだいね」
「はい。ありがとうございます」
深雪はぺこりと頭を下げる。すると後ろから霜歩が抱きついてきた。
「わわ!」
「う〜ん。ちっちゃくて可愛い〜」
霜歩はそのまま頬擦りしてくる。
「ちっちゃ!べ、別にちっちゃくないですし……」
「ああ!霜歩ずるい!私も私も!」
今度は前から抱きしめられてしまい、二人の柔らかな感触に包まれる。
(ちょっとなんなのよ!この二人は!っていうか胸大きすぎでしょ!)
二人の豊満な胸に圧倒されながら深雪はされるがままになっていた。
***
「ご、ごめんね、深雪ちゃん。私達妹ができてはしゃいじゃって」
「いえ、別に気にしてないですし」
深雪はそう言うが実際はかなり動揺していた。あの後しばらく二人に可愛がられたあとようやく解放されたのだが、未だにドキドキしている。
「でも良かったぁ。これで三人家族だねぇ」
「そうですね。二人はおいくつなんですか?」
「私は28歳で霜歩は27歳。私達の方がだいぶお姉さんだから何でも頼ってくれていいわよ」
「はい。わかりました」
「ちなみに私のことは『冬花お姉ちゃん』って呼んで欲しいかな」
「え?それはちょっと恥ずかしいかなって」
「ダメ?」
「……はい」
「どうしても?」
「……うぅ」
「冬花やめなよぉ。深雪ちゃん困ってるよ」
「だってぇ」
冬花は涙目になって深雪を見つめてくる。その姿はとても可愛かったがさすがにこれはハードルが高い。
「じゃあじゃあ!深雪ちゃんのことはふぶちゃんって呼んでもいいかしら?」
「え!?」
「それなら大丈夫よね?」
「はい。それでしたら」
「やったあ!」
深雪は冬花が嬉しそうに飛び跳ねている姿を見ながら苦笑いを浮かべた。
「あ!そうだ。まだ夕飯食べてなかったよね。何食べたい?」
「そうね。せっかくだし何か作ろうかしら」
「え?そんな悪いですよ」
「遠慮しないで。私達料理得意なんだから」
「えっと……じゃあオムライスが食べたいな……です」
「うん!任せて!」
冬花と霜歩は張り切って台所に立つ。そして数分後に美味しそうな匂いがしてきた。
***
「はい!お待たせしました」
冬花と霜歩が作ったのはふわトロでとても美味しいオムライスだった。
「いただきます」
深雪はスプーンで一口食べる。するとあまりの美味しさに思わず声が出てしまった。
「お、おいしい……!」
深雪は夢中でオムライスを食べ続ける。その様子を見て冬花と霜歩は満足そうに微笑んでいた。
「気に入ってくれたみたいで嬉しいわ」
「よかったね冬花!」
「ええ」深雪はあっという間に完食してしまった。
「ふう……ごちそうさまでした。こんなに美味しいご飯は初めてかも……」
「ふふっ。お粗末様。これから毎日食べられるから楽しみにしててね」
「はい!ところでお母さん達はいつ帰ってくるんですか?」
「それがわからないのよねえ」
「え?どういうことですか?」
「実はお父さん、転勤が決まった時に手紙を残してくれていてね。そこには『落ち着いた頃に一度帰るよ』って書いてあったんだけど、肝心の時間とかは書かれてなくて……」
「な、なるほど」
「でもまあいっか!向こうに着いたら電話くれるだろうし、それまでは三人でのんびり暮らしましょう!」
「はい!」
***
「ふぶちゃん、お風呂入ろっか」
冬花はお皿を洗っている深雪に声をかける。
「え?お風呂ですか?」
「そう。一緒に入らない?」
「ええっ!?」
深雪は突然の提案に驚く。しかし冬花の表情を見ると冗談ではなさそうであった。
「えっと……じゃあはい」
「私も入る入るぅ。ふぶちゃんの背中流すぅ」
霜歩もそう言ってついてくる。どうやら本当に三姉妹として仲良くしようという意図があるようだ。
「わかったわ。じゃあ行きましょうか」
「はーい!」
「わ、わかりました」
こうして三人は脱衣所へと向かっていった。
***
「はい、ばんざーい」
「いや、自分で脱げるんで」
「あら、残念」
深雪は服を脱ぎ終えて浴室に入る。するとそこには綺麗な裸体を晒す二人の姿が……。
(うう、一緒にお風呂なんて恥ずかしい……)
「じゃあふぶちゃん、こっちに座って」
「はい」
深雪は言われた通りに椅子に座る。
「じゃあ始めるね」
冬花はシャンプーを手に取り泡立てる。そして深雪の頭を洗い始めた。
「痛くない?」
「はい、気持ちいいです」
「良かったぁ」
霜歩も負けじと深雪の身体を洗い始める。
「んしょ、んしょ、痒いところはないですかぁ?」
「ふふ、大丈夫です」
深雪は霜歩の可愛らしいマッサージに癒されていた。そして三人は体を洗い終えると浴槽の方に歩いていく。
「三人じゃ狭くて入れないですね」
「だいじょうぶ♡」
冬花と霜歩は先に浴槽に浸かると手招きする。
「ほぉら。お膝の上にいらっしゃい」
二人は足を広げてスペースを作ると、そこに深雪を誘導する。
「ちょ……恥ずかしいですよ」
「恥ずかしがることないわよ。だって家族なんだから」
「そぉだよぉ。それにぃ、今日から私たちがママだと思えばいいんだよぉ」
「マ、ママ……?それってどういう意味ですか?」
「ふふっ。そのままの意味よ」
深雪は浴槽に入ると、冬花の膝の上に座った。
「うう、やっぱり恥ずかしい……」
「大丈夫よ。すぐに慣れるわ」
冬花は深雪をギュッと抱きしめる。
「ああ〜可愛い〜」
霜歩も深雪の前から抱きつく。
(はぁ〜柔らかくて暖かいし幸せぇ)
二人に包み込まれながら深雪は目を閉じた。
・
・
・
(はっ!いけないいけない!危うくダメになるとこだったわ!っていうかなんなのよこの状況は!)
深雪は正気を取り戻すと慌てて離れようとする。
「あの、もう出ますから離してくださ……」
「だーめ」
「えぇ!?」
「もう少しだけこのままでいさせて?」
「え……えっと、その……もう無理!限界!」
深雪は耐えきれなくなって飛び上がる。
「ふ、ふぶちゃん?」
二人は困惑して深雪を見つめる。
「こ、子供扱いしないで!ちょっと胸が大きいからって調子に乗って!あたしはこう見えて大人なんだから!このエロ姉妹!」
深雪は顔を真っ赤にして叫ぶと、逃げるように浴室から出ていった。
***
「言っちゃった……どうしよう……」
深雪は部屋に戻るとベッドに飛び込んだ。
(お母さん……)
深雪は枕に顔を埋める。するとしばらくして部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。
「ふぶちゃん、入ってもいい?」
「はい……」
冬花と霜歩はゆっくりと部屋に入ってくる。
「あのね、私達、悪いことしたと思ってるの」
「え?」
「私達が勝手に勘違いしてたせいで、ふぶちゃんを傷つけちゃって……」
「ごめんねぇ……」
二人は申し訳なさそうに頭を下げる。
「いえ、あたしの方こそひどいこと言っちゃって……」
深雪も同じように謝る。
「私達のお母さんはね、実はもう亡くなってるの」
「え?そうなんですか?」
「うん。病気でね。幼い時の話だからあんまり記憶がないんだけど、私達は母親の愛情を知らずに育ってきたの。それでね、ふぶちゃんが来てから思ったの。少しでも私達が母親代わりになってあげようって。ふぶちゃんには愛情たっぷりのご飯を食べさせたいし、お風呂にも一緒に入ったりしたいなって」
「……そう、だったんですね」
「でもふぶちゃんはまだ高校生だし、いきなりママなんて言われても困るよね。ほんと、何言ってんだろ、私は……」
冬花は悲しげに笑う。しかし次の瞬間、深雪は勢いよく立ち上がった。
「そんな事ありません!」
「え……?」
「確かに最初はびっくりしましたけど、でも嬉しかったです。今までこんな風に誰かに抱きしめて貰うことなんて無かったから。それに、すごく暖かかったです。優しくて、安心できて、とても幸せな気分になれました。だから……ありがとうございます。あたしなんかのためにそこまでしてくれて」
深雪は笑顔を浮かべると、今度は逆に冬花のことをぎゅっと抱きしめる。
「ふぶちゃん……」
「ふぶちゃん、私もぉ」
霜歩も続けて深雪に抱きついた。
「ちょ、苦しいってばぁ」
三人はそのまましばらく笑い合っていた。
***
「じゃあ寝ましょうか」
「そうだねぇ」
「わかりました」
三人は布団の中へと入っていく。
「ちょっと待ちなさい!どうして二人も入るのよ!」
「えぇ?だって三人で一緒に寝たいしぃ」
「いやいや!シングルサイズなんだから無理だって!」
「大丈夫よ。ほら、こうしてギュッてすれば……」
「うう、狭い……」
「さあ、ねんねしましょうねえ。おやすみのチューする?」
(子供扱いしないでえええええ!)
深雪は心の中で叫んだ。
こうして三人の長い一日が終わりを告げる。
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