ごめんを貴方に

さっそく買い出しを済ませてアジトへ戻る

アオイ「よし、手間がかかるものから」

   「いこうか。」

   「パッションキウイでコンポートを」

   「作ろう。」

 良く洗って皮を向いて砂糖で煮詰める

 んでそれに赤ワイン、レモン一杯

 それをよーく煮込む。

 煮込んでいる間に次のものを

 ハーブは天日干ししてしばらくよく乾かす。

 今回は魔法でさらに乾燥を早める。

 次に、木苺これはトッピングに使うから

 洗ったら日陰に置いておく。

 小麦粉、バター、卵をサックリ混ぜて

 型に入れて形を作り

 オーブン…が無いので手作りの石窯モドキで

 焼き上げる。

 そして、コンポートの横で

 卵、牛乳、小麦粉を先に混ぜておいたものを

 入れてよく混ぜ、炊きあげる。

 これでカスタードの完成

カスタードが冷えてタルト生地が焼き上がったら

 タルト生地にカスタードを乗せ上に木苺を

 飾れば出来上がりだ。

アオイ「これで…許して貰えるだろうか?」

 言い方それに渾身のビンタも食らわせたから

 これで釣り合うか少し不安だ。

メイが肩に乗っかる頬に鼻をスリスリしてくる。

アオイ「おっと、ふふくすぐったいな。」

「…うん、大丈夫だよな。ありがとうな(笑)」

 丁寧に包装をして籠に贈り物を入れて屋敷へと

 向かう。

 屋敷は相変わらずホコリ臭くて

 寂れて、静かだ。

アオイ「…ロゼー!いるかー?」

   「…少し話をしにきた。」

 屋敷にアオイの声が響き渡るだけだった。

アオイ(そりゃ、あんなことしたら)

   (出てこないよな…。)

アオイ「その…こないだ助けてくれたのに」

   「悪かった!」

「本当に助けてくれたことは感謝してる。」

「お前がいなかったらメイも俺も死んで」

「たかもしれない…。」

「けど…お前が怪我した時怖くなった。」

「お前と親しくなればなるほど」

「本音を言うと怖かったんだ。」

「また、失うと思うと怖くて

「仕方なかったんだ。」

 声が震えてきた落ち着け…落ち着け。

「…っだからこれ以上お前のこと」

「俺達のせいで死んでほしくないっ。」

「分かって欲しい…。」

「久しぶりに誰かと話せて頼ってくれて」

「役に立てて嬉しかった。」

 ここまで言っても彼は出てこない。

 愛想つかされたな…きっと。

 それでいい、これで良かったんだきっと。

「…もう、お前と会うのはこれで最後だ」

「さよなら。」

 籠を置いて去ろうとする。

ロゼ「どこ行くの?」

アオイ「…ロゼ。」

 屋敷の出口にロゼがいた。

ロゼ「屋敷に入ってくのが見えて」

  「つけて来たらなーんか喋り始めるし〜?」

 「聞いてみたら?連れないこと言って」

  「もう、さよならとか言うしー…。」

アオイ「それは、話した通りだよ。」

ロゼ「やだ。」

アオイ「っだから!」

ロゼ「俺は嫌だよ、お前が俺の居ないとこで」

  「傷ついて俺が居ないとこで泣いてたら。」

  「それにさ、助けたのも巻き込まれたのも」

  「全部、【俺から】してんの。」

アオイ「っ!…そんなの…おまえに」

   「関係ないっ。」

ロゼ「関係あるの〜。」

 「お前のことこのままほっとけねぇーって。」

 「アオちゃんさツンケンしてるけどホントは」

 「優しいし笑うとホント美人さんだし。」

 「だから、抜け出そうよ。」

アオイ「抜け出すって?どこへ?」

ロゼ「さぁ?アオがいるならどこだって」

  「いいよ。俺も行くから、な?」

 手を握られ、抱き寄せられた。

ロゼ「一緒に行こうここ以外の場所で」

  「お前が逃したあの親子みたいに…な?」

アオイ「…っ、ロ……ゼッ。」

???「ダメだよ僕のカラス。」

アオイ「ッ!クッウゥ……ッ。」

首にある奴隷の印が怪しく光り

熱を帯びる。

ロゼ「!アオ!クッソ、人が説得してる時に」

  「邪魔するとか何なのお前…。」 

謎の男は、ゆっくりとこちらへと向かう。

 コツンコツン靴音が響く。

???「僕はねこの子の飼い主だよ。」

   「夜の世界に入ったばかり…」

 「ぽっとでの眠らない太陽…白夜とは」

  「君のことだろう?」

ロゼ「…へぇ?俺のことはよぉーく」

  「ご存知ねぇ〜?…悪夢の夜」

  「レスター.バルチェーロさん?」

レスターと呼ばれた男は不敵に不遜に笑う

レスター「ハハハ!まさか僕の事を」

    「知っているとは光栄だよ。」

 「どこから機密情報を盗んできたのかな?」

   「その情報屋は後で始末しないとね。」

   「…さて、泥棒猫くん?」

   「大人しく僕のカラスを返しておくれ?」

アオイ「ッ!…っ…。」

 小刻みに震えている明らかに怯えている。

 手は首を触っている。

ロゼ「あ~やだやだ独占欲強くて嫉妬深い」

  「男ってのはキモいよ〜?」

  「ここは…俺が預かるってことで。」

 アオイを抱き寄せレスターから隠すように

 抱き寄せる、強く抱きしめられる。

アオイ「…ロゼ、ダメだっ!」

   「アイツに逆らったらもうこの世界じゃ」

「生きていけない!早く謝って俺を差し出せ!」

   「俺が口利きすればまだ間に合う!」

 「俺のことはいい!けどお前が傷つくのは」

   「嫌なんだよ!」

目には雫を貯めながら強く、強く、叫ぶ。

 それをロゼはデコピンする。

ロゼ「ばぁ~か。」

アオイ「はぁ?」

ロゼ「もう何したって遅いし」

  「俺はお前とずーといたいのわかるー?」

  「手放す気がないって言ってんの〜だから」

 「アイツ軽くボコって奴隷契約書燃やして。」

   「この街から出る。」

いつもの態度とは別にへらへらとして笑みもなく

真っ直ぐだ彼は、本気で言っている。

もしかしたら、出れるのかもしれない。

コイツとなら。

アオイ「……。本当に勝手な奴だ。」

  「だが良いだろうメイ達への」

  「扱いもまぁまぁだしな」

  「お前と一緒に居てやるよ代わりに…」 「(レスター)アイツボコるの手伝えよ」

   「ロゼ!」

ロゼ「合点承知ー!」

レスター「本当に愚かだねぇ」

「僕のカラス…君の奴隷紋は僕が持っている。」

 「君は僕に逆らうことすら出来ないのだよ?」

アオイ「それはどうかな?」

レスター「…それは?」

アオイ「お前が奴隷拘束術を分散させて」

「契約書を散り散りに隠し持っていたのは」

「知っていた…これが最後の一枚。」

「ようやくだずっと待ってた…。」

「お前から解放されるこの時をな!」

 契約書をビリビリ破り稲妻を走らせ燃やす。

アオイ「さぁ…これで2体1だ。」

レスター「それはどうかな?」

 レスターがパチン!と指を鳴らす。

アオイ「っ!ロゼ下がれ!」

ロゼ「とっ。」

 物陰から男性が現れる。

 赤色の燃えるような赤い髪に

 青色の瞳、左目は眼帯をしている。

 全身黒い服に身を包んでいる。

??「命令を直ちに遂行します。」

アオイ「っ!その声…影…なのか??」

??「…はい。」

アオイ「なら!影お前も一緒に出よう!」

影を置いていく事が気がかりだった

彼とは数年間苦楽を共にした仲だ。

一方的に仲がいいと思ってあるだけ

かもしれないがそれでも一緒に

逃げ出したい。

   「お前だけが気がかりだったんだ。」

   「俺はお前とここを…」

影「アオイさんその人が」

 「あなたを誑かしたんですか?」

影はいつもと違って冷たく

機械的に話しかけてくる。

俺の知ってる影じゃない。

アオイ「は?」

影「俺はその人を排除します。」

 「そして、貴方を連れ戻します。」

アオイ「そん…な影!」

影「すみません…俺にはこれしかないんです。」

 影は首元を見せる

アオイ「っ!奴隷契約っ。」

レスター「まぁそういうことだよ。」

    「僕が彼の契約書を今持っている。」

    「彼が今僕に逆らうことはないよ。」

 よく見ると影には暴行の跡がクッキリある。

 よほど痛めつけられたのだろう。

 影にだけはここの場所や

 ロゼのことを話していた。

それほどまでに影の事を信頼していたのだ。

 影は吐かされたのだ。

 そしてそれはつまり…俺の事を守ろうとして。

アオイ「…すまない影っ。」

影「アオイさんが謝ることはないです。」

 「すみませんでした。」

(貴方が大切にしてた者隠し通せませんでした)

ロゼ「一人だろうが二人だろうが関係ないって」

  「どっちも倒すっ!んで【開放】する!」

解放とは、影の事もだろう。

…影を倒すとは言っているが

狙いはレスターただ一人だ。

アオイ「!ああ、そうだな。」

 火蓋は今切って落とされた。

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