第168話 神様と会議をする男

時間が止まった様に静かな白い空間に、


ジークフリート皇帝陛下と二人だげだ。


「聖人様、ここは?」


と、ジークフリート様が聞く、


「良く解らないですが…


聖人様って、止めません?


王様って呼ばれるのも馴れてないのに、


せめて、国王になる前からの知り合いくらいにはユウと呼んで欲しいです。


殿。」


と俺がお願いすると、


「マヨネーズでなくて良いのか?


殿…」


と、少し恥ずかしそうに話すジークフリート様


すると、


モニターが俺達の前に現れて、


「ゴメン、ゴメン。


流れ込む神様パワーに酔いしれていたら

遅れちゃった。」


とバーチャル神様がモニターに映し出され、


「まぁ、座ってよ。」


というと、何も無い空間に「ポン!」っとソファーとローテーブルが現れる。


ジークフリート様と二人、ソファーまで移動して腰をかけると、


「長くなるから、どうぞ。」


と神様が言った瞬間に紅茶とクッキーがローテーブルに現れた。


俺が、


「神様、ここは?」


と質問すると、


モニターの青年が笑顔で、


「時間を気にせず、ユックリ喋れる時間の止まった空間的な…


うーん…日本で、何て言ったけかな?


精神と時…」


「了解しました。


神様のお力で時間の進まない空間に移動したのですね。」


何か〈危険な匂い〉を感じて、固有名詞が出る前に焦って返事をした俺に、


「まぁ、ね」


と、神様が返す。


神様はモニターの向こう側にいるが、同じようなお菓子を食べながら、


「サクサク、でね、二人に来て貰ったのは、


モゴモゴ、これからの戦いとね、」


と、大変聞き取り辛い会話をはじめる。


ジークフリート様が見かねて、


「神様、話は食べた後で良いので、先に召し上がって下さい。


同時ですと…その…聞き取り辛く…」


と申し訳無さそうに話すと、


神様が、


「ゴメンね、


お茶しに行った時に、他の神にも良く注意されるんだ。」


と語り、食べるのを止めるのかと思えば、〈先に食べる〉の選択肢を選んだようだ…


モニター向こうの神様がお菓子を頬張る〈配信〉を見せられ、


〈視聴数延びなさそう…〉


と思いながら待つこと数分、


「ぷはぁ、これでユックリ話せるよ。」


とホッコリした神様が、


「まずは、この世界の話をするんだけどね、


この世界は、〈種族の混ざらない世界〉なんだけど、それは知ってる?」


と神様が聞いてくる、


俺が、


「馬とペガサスの子供が〈馬かペガサス〉になる様にですか?」


と答えると、


「そう、そう、


でもね、遥か昔、大陸の東の果ての国にいた召喚士のお嬢さんが悪魔を呼び出して、二人でボロボロになるまでスタンピードに立ち向かい、恋に落ちて生まれたのが〈魔族〉なんだ。


さっき土屋君が言ってた昔話の通りだけど、


普通は混じらないはずが、片方がこの世界の存在では無いから混ざったみたい…


でね、魔族は〈この世界の理を外れた存在〉と、彼らは考えて、何代も隠れ住んでいたのだけど、〈それは、おかしい!〉と立ち上がったのが〈魔王〉だった、


魔王は、全ての国を魔族が治めれば〈迫害〉を受けずに済むと考えて戦を起こしてしまった。


隠れ住んでいただけで〈迫害〉はされて無かったんだけど、閉鎖的な世界は彼には窮屈だったみたい…


強い魔物が闊歩する地域の魔族が他の人間より弱いはずがないので、彼らの進撃は止められずに、


多くの人間が魔族に虐げられた…


そこで、異世界の強い魂の勇者を呼ぶ為に、まずは異世界人が作った国を起こして勇者のサポートをして欲しいと頼んだのが〈田中君〉だったんだよ。」


と、神様が説明すると、


ジークフリート様は


「ご先祖様が…」


と呟く…


神様が、


「勇者や賢者、大魔法使いに聖女、


沢山の流れ人の力で、人間は少し強く成る様に導かれ、魔族は彼らの手によって倒され、


晴れて、魔族は本当に〈迫害〉される存在になってしまった。


今になって大失敗だったと思っている…


そして、優秀な〈召喚士〉の末裔の中に、呼び出してはいけない者を呼び出した者がいたらしい。


〈らしい〉というのは、実際に見たわけでは無いからだ、


神様が何処でも見れると思ったら大間違いだよ。


少なくとも神の声を聞いたことの有る者の視界を通してしか見れないから確認は出来ていない…


でも、生け贄の魂を使った〈召喚・送喚〉は、神のルールでも一発退場ものの禁忌だ、


この世界で八十年ほど前に、土屋君の一つ先輩の〈流れ人〉の山田君は、生け贄の魂を使った〈送喚〉で送り込まれた魔物に殺されて、その時の〈熊〉の魂の記憶で初めて奴らの存在に気がついた。


しかし、神様パワーを使い果たして、熊が開けた異世界との壁の修復と強化を行い、


無理を言って地球の神様に山田君の転移をお願いしたんだ…」


と語った。


〈!繋がった、成る程…


やはり、地球とこの世界は時間の流れが違う、日本の神様がパワーを取り戻して無かったが、こちらの神様はパワーを取り戻す時間が有ったから、


俺は石段から落ちて死んだあと、


山田さんを転移させて神様パワーを使い果たした日本の神様に借りを返す形で、コチラに来れたんだ!〉


と納得したものの、


〈どうしたら良いんだろう感が半端ない。〉


ジークフリート様が、


「して、我らは何をすれば良いのでしょう?」


と質問してくれた。


〈ナイス!〉


神様が、


「皇帝君にはスタンピードの後方にいる二万近い兵士の担当をお願いしたいのと、


土屋君にはスタンピードの対応と、問題は…これを見て。」


とモニターに映像が流れ、


松下竜司とドラゴン風の人?が映る。


神様が続けて、


「この者達は、今回の被害者なのだか、強い奴隷紋で、無理やり従わされているので、


さきほどの腕輪の〈呪解〉で、解放出来るが、


問題は、この映像の主のブラックドラゴンは複雑な呪いに掛かっており、呪解では救えぬかもしれないが、可能であれば救ってやって欲しい。」


と頼まれた。


「やるだけやってみます。」


と答えるが良いアイデアが浮かばない。


神様が、


「無理ならドラゴンは仕方ないにしても、魔族から変異させられた者達の居場所を頼みたい、


あの者達には罪は無いのだから…。」


と寂しそうに話す。


俺は、


「その点はマヨネーズの国で面倒見るから大丈夫、任せて下さい。」


と告げると、


神様は、ニコッっと笑って、


「なら安心だね。」


と、またお菓子を食べはじめた…見てるだけで糖尿になりそう…

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