第162話 建国して王となる男

拠点の街に帰ってきている。


インテルの街で〈レッドドラゴン〉を夜中にコッソリと解体してもらい、


錬金ギルドが血や目玉や角や舌を買いとってくれたのだが、


支払いとして貰ったのが…


彼、〈器用貧乏な錬金術師〉の〈コーテルさん〉である。


この、どこぞの〈餃子〉みたいな名前の彼は、腕は良いが、押しが弱く、ギルドの三番手的な役回りで、


〈ここに居てもダメだ〉


と思って暮らしていたところ、錬金ギルドマスターから


「他国の錬金術師のトップとして出向する気はないか?」


と誘われて、


急遽、生け贄…いや、技術支援の為にウチに来た、物腰柔らかいおっちゃんだ。


現在、購入してきた〈安全・念話ヘルメット〉に〈マイさん〉が主導で、魔鉱鉄で見た目を〈工事現場ヘルメット〉から〈鉄帽子風〉にアレンジして、


レッドドラゴンの鱗を〈コーテル〉さんが加工して錬金素材化させる。


そして、シングルマザーの頑張り屋付与師の〈ミモザ〉さんが〈付与〉して、


真っ赤な鉄帽子に変えていく。


すると、レッドドラゴンの素材の力で〈炎耐性〉と〈物理耐性〉がついた


〈念話レッドキャップ〉が、出来上がる。


そして、鍛治師組が作った特注のワイバーンナイト専用の装備セット〈胸当て〉・〈籠手〉・〈ブーツ〉


それと、頑丈な布とレッドドラゴンの革を使い、奥さまチームが縫い上げた頑丈な服にも


コーテルさんが錬金素材化させたレッドドラゴンの〈骨〉をミモザさんが付与して、


〈頑強〉の付与された、


白地に赤のワンポイントがイカしている装備が仕上がった。


これに帝都で注文していたお揃いのゴーグルをつければ完成になる。


そして、ワイバーンの追加だが、


エトナ王国組に聞けば、レッドドラゴンに王様の命令でエサを運んでいたらしいが、


アホの第一王子の指示でエサをやりに行かずに〈自分で探させていた結果〉山の魔物が散ってしまったらしい。


〈ドラゴン君に退場して頂いたので〉


とヤングさん達と再度探しに行って、追加のワイバーンも沢山仲間にできた。


〈ドラゴンを退治して頂きありがとう御座います。〉


と、ワイバーンの群れが来てくれた上に、


若いペガサスの群れもあの温泉地帯に来ていた時にレッドドラゴンに仲間を喰われたらしく、


仇を取った俺達の子に成ってくれて、


拠点に若いペガサスが10頭増えた。


〈メスのペガサスが成長すれば、我が家の種馬ボーイのサンダーやその息子のクラウド君が、本能を解放するはめになるだろう…〉



そして、少し温かく成ってきた3月の末


注文したゴーグルと一緒に帝都の宰相様と文官職の方々が、ウチ街に到着した。


宰相様達は、拠点を一巡りして、


「想像以上の街…いや、国ですな。」


と感心していた。


街から作っているから、外部の方をお迎え出来る施設はまだないので、作りかけの教会の建物で、


拠点の主要メンバーを集めて、建国の手続きをする事になった。


建国の手続きと言っても、


〈隣に建国しました〉


〈了解です。〉


という書類にサインをするだけだ。


天井の高い大聖堂の中で、


宰相さんが何か読み上げているのだが、


…のだが…


内容が入ってこない!


何故なら、


「以上で、〈マヨネーズ王国〉の建国を認め、帝国・セントラル王国共に、これを祝うものである。」


と言っているからである。


〈ん、だよ! マヨネーズ王国って!!〉


また、マヨネーズの呪いだよ…


〈田中の野郎!自分がコートレットだからって、俺までマヨネーズにする事ないだろ?!〉


と思うが、


憤る心をグッと堪えて、


「宰相様、少し質問ですが…」


と声をだす俺に、


「書類に不備でもございましたか?」


と心配する宰相様…


「いや、不備などはございませんが、


ございませんが…何故、〈マヨネーズ〉でございますか?」


と質問をした俺に、


えっ?何を今さら?


みたいな顔をした宰相様が、


「皇帝陛下の強い薦めと、セントラル王国のジェルバ公爵も、〈送った紋章がそのまま使える〉と、喜ばれておられましたので…


いけませんでしたか?」


と不安そうだ。


〈確かに、お任せした手前、文句は言いづらい…しかも、お隣のジェルバ公爵が紋章をくれた張本人だし…


ご近所付き合いの為にも、


マヨネーズに成るしか…ないかぁ…〉


と、覚悟を決めて、


「いえ、国の名付け親に成って頂いた皇帝陛下と、国の旗を下さったジェルバ公爵の善き隣国と成れるように頑張ります。」


と、少し遠く目をしながら答える俺に、


宰相様は、


「して、ジェルバ公爵の送った紋章とは?」


と聞いてくる。


するとノーラ騎士団長が、


「旗を掲げよ!」


と、指示を出すと大聖堂の左右から騎士団が息の合った動きで、


〈バッバ!〉


と音が聞こえ〈マヨネーズの小瓶〉の旗がはためく。


宰相様は〈ホッホッホ〉笑いながら、


「これはこれは、〈国名〉まで入った見事な〈国旗〉ではありませんか!」


と感心している。


〈確かに、マヨネーズと小瓶に表記は、してあるけども…〉


もう、半ば諦めて、


机に並べられた書類に、


〈国王、ユウ・ツチヤ・マヨネーズ〉


と、サインをしていく。


エライもので、サインは書き慣れていた〈マヨネーズ〉の方がしっくりきてしまった。



〈まぁ、今さらドラグーン国王は、から良いことにしよう。


旗も国旗に使えてエコだよね。〉


教会にこだまする、


「国王陛下万歳、マヨネーズ王国万歳」


の声を聞きながら、


少しガイルス辺境伯のオッサンを恨む俺がいた…

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