第139話 移住宣言を受ける男
手紙を読み終えて、項垂れる俺に、
ブルーが、
「工房組からの伝言です。
〈ご主人様水くさいです。こちらでの仕事を引き継ぎ次第に駆けつけますので、しばらくお待ちください。〉
との事です。
それと、既に数名の親方達が弟子を集めて、こちらに移住する準備を整えています。」
と報告してきた。
まぁ、国に縛られないから自由に出来るけど、どうやって食べさせていこうかな?
と悩んでいると、
ブルーがクスッと笑って、
「クララさん達の言った通りですね。
たぶん師匠は、〈皆の生活を…〉
とか難しく考えるから、
眉間にシワがよったら、
〈移住出来る更地だけ用意して下さい、あとは自分達で何とでもできます。〉
と追加で言っておいて下さい
と言われてましたので。」
と笑顔で話した。
〈お見通しかぁ~。〉
と感心していると、
〈サン〉が、
〈それでは、ご主人様、我々を一度巣まで送り返してください。〉
と言ってくる、
ん?
よく考えると〈サン〉も〈狼親子〉も召喚状態のままだった!
すっかり忘れてた事は内緒にして、
「了解した。」
と返事をする。
サンが続けて、
「帰りに〈親方さん〉を連れてくるので、ゴンドラを貸して欲しいです。」
と言ってきたので、
俺は、
「あんなもの親方に任せたら、あっという間に作るから、
説明を書いた紙をリオとレイに咥えて送喚するので、親方のついでにリオとレイとクロイやグレイは、おっきいから無理かな?プラも子育て中だから難しいかも…
とりあえず二匹はお願い、クロイ達は本人に相談してみて」
と伝えて、
俺の王国産の従魔チームを送喚していく。
ファイアドラグーンのママと娘は拠点でお留守番である。
そして、ブルーは
「師匠、私は近くの街で冒険者登録と昇級をしてきます。
パパン達に〈シュート〉達の輸送もお願いしてありますので、皆が到着するまでの時間潰しがてら街の入場料が要らなくなる〈C級〉を目指します。」
と話した。
俺が、
「えっ、何でその事を知ってるの?」
と聞くと、ブルーは、
「ウチには情報通のトーマスさんやゴードンさんが居ますから。」
と答えたが、
〈彼らは情報通でなくて元諜報員だよ。〉
と心の中だけで答えた。
ブルーは、
「では、行って参ります。」
とサンダーに乗って飛び立った。
そこで初めて拠点内にゴーレム君意外見当たらない事に気がつく、
「おーい、アドラぁ~!メレクぅ~!」
と呼ぶと、厩舎の窓の所に、
牛、牛、アドラ、牛、牛、メレク、熊
の順に鼻から上が並んでこちらを見ている。
俺が、
「ナニやってるの?
出てこないから紹介するの忘れてたよ。」
と話すと、
「本当に大丈夫ですかぁ~?」
とアドラの声がする。
〈まぁ、あの数のドラグーンに囲まれたら普通ビビるよね。〉
知ってるドラグーン1に知らないドラグーン5とペガサスと冒険者だから…
俺は先にドラグーンの母と娘に名付けをすることにした。
赤いドラグーンの母に〈リンゴ〉、
赤いドラグーンの娘には、モモコ…はやめて〈イチゴ〉と命名した。
二人は、名前を気に入った様子で、
〈リンゴママ〉、〈イチゴちゃん〉と呼びあい、牛達を気遣い放牧場から遠い〈解体場〉奥の空き地でくつろぎだした。
ようやく安心して出てきたビビり職員達の紹介を親子にすると、
早速〈イチゴ〉の遊び相手に〈ベアえもん〉が選ばれていた。
リンゴが、
〈偵察がてら狩りに行きます〉
と飛び立ったので、
イチゴちゃんとベアえもんを引き連れて、壁の外チームの紹介に向かう。
門番のゴーレム君にも〈イチゴちゃん〉は興味を示したが、
「ゴーレム君は門番のお仕事があるから邪魔しちゃダメだよ。
ベアえもんで我慢してね。」
と俺がいうと、
イチゴちゃんは
〈はぁ~い!〉
と、良いお返事を返してくれたが、
ベアえもんは、この世の終わりみたいな顔で、
〈マジっすか?〉
と呟いた。
門を出て、〈ブラックタイガー〉の〈フライ〉と〈チャン〉に挨拶をしたのだか、やはりドラグーン軍団が怖かったらしく、部屋の隅で可能な限り小さくなっている、
事情を説明したら、ようやく安心したようで、
夫婦揃って〈イチゴちゃん〉にスリスリしたりして歓迎していた。
続いては〈ガラパゴス〉なのだが、
拠点の出入り口の真反対の辺りで森をつまみ食いしているはず…だが…
「何じゃコリャぁぁぁ!!」
方々に丸太の山を作りながら、魔の森の中心部の山周辺は、
四十代男性の頭頂部の様に禿げはじめていた。
たった数日で、どれだけ食ったら気がすむんだよ!
俺は拠点から数百メートル離れた〈ガラパゴス〉に走り寄り、
食いすぎを注意する。
そして、食べて良い区画の端に、〈ストーンウォール〉を〈形状変化〉で柱状にして目印を立てて、
「今日から一ヶ月で食べて良いのは、あそこ迄とします!」
と通達すると、
しぶしぶだが〈ガラパゴス〉は了解してくれた。
あの大草原は〈ガラパゴス〉一匹のせいで出来た可能性まで有る食欲だ。
〈とんだ可能性の獣だよ。〉
ボアが住めなくなる前に気付いて良かった。
でも、〈ガラパゴス〉の事を〈イチゴちゃん〉は、すっごく気に入ったみたいで、〈ベアえもん〉をほったらかして、ガラパゴスの甲羅を滑り台にして遊んでいる。
ベアえもんが安堵の表情を浮かべていたことは〈イチゴちゃん〉には黙っておこう。
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