第81話 謁見の間で驚かされる男



やっと、王様からの呼び出しがあった。


アイテムボックスから馬車をだして、

クロイとサンダーに馬車をつなぐ。


何か、クロイに羽でも付けたら空を飛ぶ馬車になりそうな見た目だ。


クララさんの新作の貴族服を着て、

トーマスさんとシルビアさん夫婦と共に

城に向かう。


謁見の間に通されて、辺りを見回すと、


〈あれ、少なくない?〉


と思っていたら、


「国王陛下の、御成りぃぃぃ!」


と声が響いて国王陛下が入ってくるが、すでに怒りのオーラを纏っている。


「皆の者、此度大罪を犯した、マルゲス侯爵以下四人の貴族家が取り潰しとなり、女子供、使用人に至るまで一族連座の罰を与えた。」


何も知らない貴族達がザワザワしだす。


「一族の首は刑場前にならんでおる。

これほどの数が並んだのは王国の歴史の中でも恥ずべき大記録として、私の名前と共に刻まれた。


実に腹立たしいことだ、


しかし、それよりも昔の大戦から少しずつ友好なつき合いが出来るようになった帝国に対して勝手に王国の名を騙り、略奪行為を行い、性奴隷を手に入れるために奴隷商と結託し、メイドや令嬢を王国法を破り無理矢理に奴隷へと落とした!」


国王様が本気で怒っているのが伝わってくる。


王様は深呼吸を一つしてから、

落ち着いた口調で、


「私は明日帝国に向けて謝罪の旅にでる。

非道な手口で町ごと餌食になった領地が解っただけでも三ヶ所あり、


王国は多額の賠償金を払わなければならなくなった。」


〈そりゃ大変だなぁ〉

と、国王陛下の話を聞いていたら。


「此度の非道を見抜き、調べあげ、私に報告した者がいる。


ユウ・ツチヤ・マヨネーズ男爵、前へ!」


と呼ばれた。


…また、嫌味を言われるぞ。


と構えていたが、一つも嫌味が飛んで来ない。


それどころか例の顔を覚えた嫌味な一団がいない…。


〈あれが、マルゲス侯爵一党だったのかな?〉



王の前に出ると、


「違法奴隷の発見から、我が王国貴族の非道な行いをよくぞ見抜いてくれた。


非道な手口で奴隷に落ちた市民まで自費を投じて買い取り、


そなたの商会で職員や職人として、住む場所と仕事を与えてくれたと聞いている、


そして、マルゲス達に占領されて略奪の限りを尽くされ、住む場所を失った女性や子供それに老人、百名以上が、


マヨネーズ男爵の庇護を求めて商会を目指していると聞く。」


…?!百名の女性や子供に老人?…



知らん、知らん、知らん、


聞いたこと無いよ。


社員寮パンパンだよ?


俺は心の中で、焦りまくっているが、


構わす国王陛下は続ける。


「王国として、そなたの働きに褒賞金の一つでも出してやりたいが、


恥ずかしながら、帝国に支払う賠償金で我が王国は火の車だ。


代わりにと言ってはなんだが、ユウ・ツチヤ・マヨネーズ男爵に子爵位を与え、」


〈いらん、いらん、いらん!〉


「ガイルス辺境伯領と王都の中間に位置する、ドラグーン平原を領地として与える。


以後、ユウ・ツチヤ・ドラグーンと名乗るよい。」


えっ、マヨネーズで無くていい…の?


「遥か昔に都市あったとされるが、今は、湖とダンジョンが有るだけの平原で許して欲しい。


湖が有るために水は豊富だが、小麦が育ち難い土地だ。


今はライスが自生するのみの湿気の多い土地だが、ドラグーン子爵がその知恵と行動力で豊かな領地と変えてくれることを祈る。」


〈ライス〉〈ドラグーン〉…


「お任せください、

ユウ・ツチヤ・ドラグーン、

子爵を賜り、

豊かな領地となるように努力いたします。」


もう、こうなりゃ自棄だ!


〈カレーを食ってから考える!〉


王様が続ける


「本来ならば、没収した豊かな領地を与える予定だったが、ガイルスがそなたの商会が軌道に乗るのを待たずして遠くへやるのはよろしくないと申してな、


しばらくは、ガイルスの領都にて拠点を構えてユックリ開発していくとよい。


領地が整うまで税と兵役は無しとするゆえ。」


と国王陛下に、


「有り難き幸せ。」


と頭を下げたが…己の食欲に任せて進言したガイルス辺境伯にはお仕置きが必要なようだな。

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