第33話


「どうしますかね」


あの旭を襲っている大量の子蛇は、おそらくあの大蛇のうろこが変異したものでしょう。


大蛇へと攻撃を続ければ、これからどんどんと子蛇が増えることが予想できる。


だとしたら異常なステータスを持つとはいえ、旭だけであの大量の子蛇に対応できなくなる可能性が高い。



…エマに攻撃させますか?

それで子蛇のヘイトが別れるのかどうかを試さないと。


子蛇から逃げるだけなら紬だけである程度の対応は出来そうだ。

ダメなら莉奈に頼みますか。



「エマ、大蛇に攻撃を」


エマに指示をだす。


「属性は」

「無で」

「し、キャアア!」


突然インカムから叫び声が聞こえた。


「エマ!?」


慌てて後方にいるエマの方を見ると、何やら赤黒い蛇が紬たちを攻撃しているのが見えた。


旭を襲っている子蛇には見えない。別種?

それにブレスを吐いている?


「莉奈!」

「あいよ!」


莉奈が急いで駆け付ける。

赤黒い蛇はすぐに霧の海の中に消えていった。


紬とエマはそのまま襲われた位置から逃げ続けている。

紬が負傷しているように見えた。


「紬さんが!」

「大丈夫です。ただ、ブレスをかすっただけでHPが7割持ってかれました」


7割! アサシン型ですか?


先ほどの子蛇とは姿がまったく違いました。

紬だけでの対処は辛そうだ。


「わかりました。莉奈、そのまま紬たちの支援を」

「わかった」


エマが紬の回復を行っているのが見えた。


前に注目させて後ろを狙うアサシン型か…。


アサシン型は攻撃力が高くて、防御力が低いのが特徴です。

最初のボスを見れば、おそらくこのアサシン型も特徴通りになっているはずでしょう。


「大蛇をタンクスネーク、先ほどの蛇をアサシンスネークとします」

「わかった」





気がかりがある。

先ほどエマはまだ攻撃をしていなかった。


攻撃をしていない相手を狙うことは、あるにはあるが、それは近いもの順で狙うのがセオリーだ。


あのアサシンスネークは何を条件に敵を選んでいるのか、まだはっきりとしない。

…ひとまず、アサシンスネークを先に攻略しますか。


一撃の威力は高いが、防御力が低く倒しやすいのがアサシン型。


狙う条件は不明だが、先ほどと同じならエマを狙うはず。

そこをつく。


「まずは、アサシンスネークを狙います。旭、少しの間…」

「…遥?」


莉奈が聞く。


岩の下の霧の海の中にちらりと何かが見えた。とっさに刀を構える。

そしておもむろに何かが飛び出してくる。


赤黒い蛇!


そいつが遥に牙を向ける。

さきほどエマ達を襲ったアサシンスネークだ。


「ぐ!」


刀でアサシンスネークの口を押えるが切れない。

アサシンスネークの凶悪な瞳と牙が目の前にある。


遥とアサシンスネーク、お互いがお互いを睨みつける。


「遥!?」


莉奈の声が聞こえる。


「孤立を狙うタイプ!?」


そのままアサシンスネークに押され、岩の上から落とされ、霧の海の中へと落とされた。

そして相手は口を開いたまま、ブレスを吐こうとする。


とっさに刀をそらして、口を別の方向へ向けて蹴り飛ばす。

飛ばすついでに刀で切り裂く。


ダメージは多少入った。

アサシンスネークの吐いたブレスが岩へと向かう。


ブレスの先にある岩が簡単に溶けていく。

アサシンスネークはどこかへと消えていった。




「はぁ、はぁ…。 危なかった…」


あのアサシンスネーク。


おそらく、タンクスネークが対象としている人以外で、一番数が少ないグループを狙う。


先ほどはその中で隙を晒したエマを狙った。

そして次に莉奈から離れた私だ。


「大丈夫か!?」

「ええ、なんとか」


莉奈が心配の声を上げる。


攻撃は私で何とか防げるレベルの攻撃。

だが、防ぎきれなければ一撃で死ぬ攻撃。


四人集まるか? そうすれば対処が楽だ。

けどそれをすれば自動的に対象が数が少ない瑞樹と杏菜になる可能性がある。


「今、瑞樹が狙われる可能性は絶対に0にしないといけません」


それは絶対に避けないといけない。


まだ孤立した人が対象と決まったわけじゃない。

まずは確かめないといけませんね。


…私か莉奈が囮になるか。

そうすれば、襲ってくるはず。


「ちょ! 多すぎ!」


その時、旭の声が聞こえた。


旭の姿を見るために岩の上に上がると、大量の蛇に襲われていた。







なんか調子に乗って大蛇殴ってたら対処できないほどに子蛇が出てきたでゴザル。


この大蛇、鱗をたたけば叩くほど子蛇の数が増えていく!

ビスケットかよ!


それに気づいてからはしばらく大蛇を叩くのをやめた。

遥たちの判断を仰ぎたいし、これ以上子蛇が増えても困る。


子蛇ガッポガッポは望んでいないのだ。


だがそう思って遥に聞こうとしたときに、後ろにいたエマ達が攻撃されていた。


なんかすげー忙しそうだし、きつそう。

けど俺が下手に動くわけにもいかない。


そして聞くタイミングを逃した。


しばらくすると、今度は大蛇はブレスを吐いた後に体をふるった。

体中からパラパラと鱗が落ち、そこらじゅうにバラまかれる。


そんなのあり!?

叩かなくても増えるとか無限ビスケットじゃん!

食い放題か!


どうするべきか。

しばらくまばらに来る子蛇を倒しながら逃げ続けると、途中で一気に子蛇の大群が俺を襲ってきた。


「ちょ! 多すぎ!」


岩上に急いで逃げると、奴らも追ってきた。

小さな蛇が集まって大きな蛇に見えるような形だ。


イワシの群れかよ!

こんなん盾とか関係ないし、ハンマーでも対応しきれん!


逃げるっきゃねぇ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る