第31話 五人の関係

「ところで、五人の関係って……何?」

 

 私達、五人を見た芳賀さんからの質問だ。———そうだよ。この五人見たら一番先に来る疑問だよ。誰が答える? 誤魔化す? 嘘つく? 正直に話す?


 陽葵も大地君も上を見て下を見てお互いを見て悩んでる。

 私達が戸惑う中、正吾君は空君に全部委ねたようだ。


「———空。任せた。お前に従う」


 大地君と陽葵ちゃんも頷いている。私も頷いた。

 そして、空君が意を決したように時話し始めた。


「学校では絶対内緒にしてて欲しいんだけど……俺らバンドやってんだよ」


「え? 希乃さんと葉倉さんも?」


 芳賀さんは私と陽葵を交互に指差している。


「うん」


「へ———! 全然イメージないじゃん。そんな素振りも無かったし。いつから?」


「私と大地と空は高校入って直ぐくらいかな。丹菜と正吾君は二学期入ったくらいから」


「正吾君も全然イメージ無いけど言われると今までの振る舞いがロックっぽいわ」


「———俺の存在がロックだからな」


「たまに発言がバカだよね」


「———まあな」


「そこ認めるんですね」


「今の話聞いて日頃のこの三人の構図思い出すと凄く面白いね。で、正吾君が小堀君に答えを委ねたって事は、リーダー小堀君なんだね」


「はい。リーダーの小堀です」


「なんか皆カッコいいわ」


 ・

 ・

 ・


 暫く勉強そっちのけで話が盛り上がった。

 彼女に教えたのはそれぞれのパートだけで、バンド名とかは伏せた。


 勉強も普通にやって、夕食に喫茶希乃音でカレーを食べた。勿論お金は払ってるよ。ジュースはサービスされたけど。



 それで肝心の芳賀さんと空君だが———。



 ———久々に私の部屋。


「もしもし、あ、芳賀さん今日は勉強教えてくれてありがとうございました」


『此方こそありがとう。葉倉さん教えるの上手だね。勉強も捗ったし、小堀君とお話もできたし良かったよ。』


「帰り道、なんか進展有りました?」


『うーんと…、月曜日から登校一緒にしよう的な感じかな? 帰りは部活有るから一緒に帰れないのが残念。なんか思った以上にグイッて来るね。でも強引じゃ無いし我儘通してるわけでもないの。理想以上でかなり……いい。』


「いいですね。私もそうなりたいですね」


『そっか、葉倉さんの想い人は正吾君か。』


「ふふふ。内緒ですよ。バレちゃうと彼、大変な事になっちゃうんで」


『そうだね内緒だね。ちょっと意外だったけど、今日のあれ見てなんか分かったわ。癖になるね、あの喋りの前のタメ。』


「分かります? 二言目には『それはロックじゃない低い声で正吾のマネ』ですから、意味が分かりません」 ヘックシ!


『でも好きなんだよね。』


「———はい」


『応援するよ。』


「ありがとうございます」



 冬が近いのに、春が近い人もいるようだ。

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