全然バンドとか興味無いのに正体隠して生活してる隣の部屋のギタリストとカラオケ行ったらバンドのボーカルに誘われて私まで正体隠すようになった。

第25話 文化祭の終わり

　―――文化祭でトゥエルブが顔をさらして二曲目に入った。

　会場の視線は、トゥエルブに集まっている。

　お蔭で、私と陽葵は仮面をしているが、意識がこっちに向きにくくなった。

　二曲目になり、私もだけど、陽葵も落ち着きを取り戻して、普通に演奏している。

　二曲目が終了して、三曲目に入ろうと思ったが、一曲目のバトルのせいで時間がかなり削られてしまった。なので三曲目の演奏をすること無く、二曲目が終了した瞬間、私達はステージ正面の階段を駆け下り、体育館を走って後にした。

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　―――私達は体育館の裏にいた。直ぐローブを脱ぎ、いつもの五人に戻っている。

　正吾君が楽しそうな、満足げな顔をしている。ステージの余韻に浸っているようだ。

「いやー……楽しかったな」

　正吾君の余りの清々しい表情に、一曲目のバトルでの気苦労を思い出し、なんか腹が立ってきた。

「楽しかったじゃ無いですよ！　何二人でバトル始めてんですか！　仕掛けたのはどっちですか！」

　そう言うと、陽葵が申し訳なさそうにゆっくり右手を小さく挙げた。

「陽葵！何、正吾君を挑発してるんですか！」

「ごめんなさい……なんかテンション上がっちゃって……」

「正吾君も正吾君です。売られたケンカなんで買ってんですか！　タダだからですか！　バトルするなら時と場所と楽器を選んで下さい！　反省しないなら今夜ご飯抜きにしますよ！」

　――――――あ、なんか余計な一言言っちゃった？　けど、誰も気が付いて居ないようだ。

　すると、後ろから高瀬さんが声を掛けてきた。

「―――あ、みんなここに居たんだ」

　グッドタイミングだ。さっきの失言うやむやになった筈。初めて高瀬さんを褒めたくなった。ナイスタイミングだ。

「皆ありがとう。本当にありがとう」

　正吾君が高瀬さんに人差し指一本立てて一言。

「貸し一つだ。そのうち返して貰う」

「―――分った。君達が困ったとき、必ず力になるよ」

「それでいい」

「しかし、君たちが今話題になってる『ハイスペックス』だと思わなかったよ」

「最初に言ったとおり、内緒な。お前は何も見ていない。俺らはあの場にいなかった」

「分ってるよ。俺はこの後、記憶喪失になる予定だから安心して。だけど、借りだけは覚えとくよ。絶対返す」

　高瀬さんは力強く言っているけど―――借り……変な返し方してこなきゃいいけど……。

「しかし、葉倉さんの彼氏が御前君だったとは思わなかったよ」

　高瀬さんの中では私の彼氏は「トゥエルブ」だったけど、さっきのライブで「トゥエルブ＝正吾」になったんだ！　ナイスだ高瀬。今の発言で今までのキモい行動とバカな行為は全て許して上げる。でも好きなのは正吾君だから勘違いしないで。

　私は正吾君をニヤニヤにながらジッと覗き込んだ。

　陽葵と大地君もニヤニヤしながら見ている。空君は普通に見ている。

「―――すまん高瀬。あれはウソだ。俺とこいつはまだ付き合ってない」

　はぁ―――！　この期に及んで何ほざいてんだこの男！　

　”―――ビシッ！”　「痛ぇ！」

　私は正吾君のふくらはぎを思いっきり蹴った。

　”―――ガッ！”　　「あがっ！」

　陽葵が正吾君のスネをツマサキで思いっきり蹴った。正吾君はスネを押さえて蹲った。

　私と陽葵は正吾君を「キッ」と睨んだ。

「痛てぇよ！　何すんだよお前ら」

　陽葵が私に変わって激怒している。

「知るか！　へたれ！　お前のロックはそんなもんか！」

　陽葵がそう言うと、私と陽葵はその場を去った。

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「丹菜も大変だね。正吾君あそこまで鈍感だとは思わなかったよ」

「さっきの高瀬さんの発言で行けるかな？　って思ったんですけど……そこは彼のロックな部分じゃ無かったみたいですね」

「彼のロックは何処にあるんだか……そう言えば、『今夜ご飯抜き』って言ってたけど、あれ何？」

「―――え？　そんな事言ってました？　多分、私が子供の頃、親に怒られるとそういう風に言われてたんで、無意識に出ちゃったんじゃないですか？　はは。ｱｾ」

「そう？　うーん……ま、別にいいんだけどね。　ﾆﾔ」

　やばいな……なんか感づかれた気がする。

　私達は、自分たちの教室へ戻った。

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　―――後夜祭。

　私は正吾君と並んで最後のキャンプファイヤー(っていうの？)を眺めている。

「ちょっとトラブルが在りましたけど、楽しかったですね」

「そうだな。まさか学校でライブやるとは全く予想しなかったよ」

「あれ、正吾君一人でギター弾くだけでも良かったんじゃないですか？」

「そうなんだけど、俺一人よりは、皆で助けた方がロックだと思ったんだよ」

「そうですね。皆で助ければロックですね。って、全然意味分りませんよ」

「そう？　実は言ってる俺も良く分って無いんだけどな」

　なんだかんだ言って、楽しい文化祭が終了した。