第22話 トラブル

 ―――文化祭二日目。


 昨日に引き続き、看板持って校内ウロウロして宣伝をして、雑用でお化け屋敷前で入場者の整理などをしていた。


 今日は陽葵と芳賀さんとでお化け屋敷の中に入ってみた。


 入った瞬間、「美少女三人入ったぞ!」と声が聞こえた。


 かなり前に、陽葵は普段「普通の子」を演出していると言ったけど、ホントは可愛いって事、男子にはバレバレみたい。実際ちょっと着飾っただけでメチャクチャ美少女に仕上がるんだよね。


 三人で中に入ると、次から次へとお化けに扮した男共が脅かしに寄ってくる。

 ただ、声が大きいだけで全然怖くない。耳を塞いでうずくまるが、単に声が五月蠅くてうずくまってるだけだ。あと顔が近い。


 普通に出てくるだけで結構怖いメークとかあったのに勿体ないことをしているなって感想だ。


 因みに芳賀さん二人ほど殴ってしまったようだが、殴られた人は「ご褒美」と言って少し喜んでいた。

 

 昨日に引き続いてこの対応だ。正直、このお化け屋敷のせいで、お化け役じゃ無かった子には悪いが、クラスの男子がちょっと嫌いになってしまった気がする。


 さて、時間はお昼になり、弁当を食べようと正吾君と控え室になっている教室に入ると、教室の隅で、頭を抱えている男子がいた。高瀬さんだ。凄く落ち込んでいるような感じだ。


 彼の事は嫌いだが、その落ち込み方は尋常では無かったので思わず声を掛けてしまった。


「―――高瀬さん、どうしたんですか?」

「葉倉さん……ちょっと困ったことが起きてしまって……」

「なんでしょう?」

「体育館のステージに、午後、バンドで出る予定でいたんだけど、俺のバンドのメンバー、他の学校の連中なんだよ。それで、ステージに他の学校の生徒は上げられないってさっき言われて……」


 ―――ん? この人、やっぱりバカですね。自分の事しか考えてないんでしょうか? 普通に考えて、他の学校の生徒をステージに上げたら、無差別に何でも有りの場になってしまうじゃないですか。


 正吾君が口を開いた。


「一人で弾き語りやればいいだろ。そんくらいの責任は取れよ」


「俺、弾き語り出来ないんだ」


「ならソロだ。インストで粘ればいい」


「コード弾きしかできないんだよ、単音弾き出来ないから……」


「実行委員はなんて言ってるんだ?」


「一般のお客さんもいるから、誰かに枠、譲ってもいいから空き時間は絶対作るなって言われて……俺、もうどうしたらいいのか―――」


 正吾君は何か考えてるようだ。


「に……葉倉さん。希乃さんに連絡して。あと、大地と空に声を掛ける。あいつら、確か一時半には体、空くはずだったよな?」


 ―――今、丹菜って言おうとしたね? 別にいいんだけど……ん? 今なんか占い師の言葉がちょっとぎったぞ。


「高瀬、実行委員に言って、出演の順番の表在るはずだからそれ貰って来い。それで、お前の後に出る音楽系の奴いたら、そいつら前倒しで出演出来ないか交渉してみてくれ。お前の番が音楽系の奴の中で一番最後になれば順番はどうでもいい。それから、ギターとベース、誰からでもいいから借りて来い」


 そう言われて、高瀬さんは走って教室を出て行った。


「正吾君、どうするんですか?」


「助けて、あいつに貸しを作ってやるだけだ」


 ―――素直じゃないね。ふふ。

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