第111話.面倒見の良い女王様
そんな光景にクスッと笑うレイラ様ですが、ふとある事が気になりワタシに聞きます。
「アカリちゃん、キョウコは今どうしているのかなぁ……?」
その瞬間、ピタッとワタシとニックの動きが止まりまして。ウルウル目で、頬にツ……とひとしずく涙が頬を伝います。
ワタシは、ぐすっ……ぐすっ……と。向こうの世界で “次元の歪み” に入り損ねたママだけが置いてけぼりを喰らってる事を説明しました。
「ふぅん……きっと、その次元の歪みはキョウコにとっての正規のルートじゃ無かったからだって思うよ」
だってさぁ……とレイラ様は指をクルクル回しながら言葉を続けます。
「もし、キョウコがちゃんと正規のルートを通れば……此処じゃなくて “アルカディア大陸” に降臨する筈なのよね!」
ウッカリです! ママ、前にもこの異世界に来てたんでした!
「しかも偶然……その時、次元の歪みからキョウコが出て来たのをアタシも目撃してるのよ!」
だ・か・ら……とレイラ様、指でワタシの鼻を軽くトントンしながら。
「アタシ、アカリちゃんの事が好きになっちゃった♡ そんなあなたが、自ら女神として生きる決心をしたの」
細い腕をワタシの首に廻しながら、レイラ様は耳元でこう囁いたんです。
「だから、あなたが自分の決断を後悔する事の無い様に……アタシ、ずっと傍で支え続けてあげたいなっ」
そして次の瞬間……レイラ様にワタシが何を我慢してるか、この言葉でバレてしまったんです。
「アタシ、別行動でひと足先にアルカディア大陸に渡ってキョウコの正規ルートの次元の歪み……開けて来てあげようか♡ どうする?」
レイラ様は、ニヤニヤとワタシの顔を見ます。こみ上げる涙にワタシ、もう涙腺の崩壊を防ぐ事は不可能でした。駄々っ子の様に、幼子に戻ってわーわーと声を出して泣いてしまったんです。
そう……レイラ
「初めて、こんな非日常に放り込まれちゃったんだよね。ニックちゃんが居るとは云え、相談出来る様な、頼りに出来る大人が居なかったんだもんね……」
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この子は今、子供と大人の狭間で揺れてる……不安定な時期なの。そんな心細い気持ちをココロの内に無理やり押し込めて、孤独と闘ってたんだもんね。
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「まさか、こんな見知らぬ土地でアタシって云う異世界の住人だけど大人のお姉さんに……まさかの優しい言葉を掛けられれば、そりゃこうなっちゃうのも仕方無いよね。ヨシヨシ♡」
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もおっ、何をポカしてんのよ、キョウコ! こりゃ、日本に行ったらお説教モードねっ (笑)
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レイラ様の胸で散々泣き、再び顔を上げる頃にはすっかり憑き物が落ちた様にスッキリした顔のワタシ。レイラ様からの提案に、断る理由は有りませんでした。
「ママの事宜しくお願いします、レイラ様!」
「分かったわよ、可愛いアカリちゃんのお願いだものね! じゃっ、先にアルカディア大陸に行ってあなたを待ってるわよ!」
そう言ってレイラ様はふりふりと手を振りながら、あっと云う間にその場から消えて居なくなったのでした。
白亜の神殿を後にしながら、ワタシはある事だけをずっと考えてました。
妖精女王レイラ様との「譲渡の儀式」も無事に終わり、現在の
そもそも根本的に……フィリルが所属していると思われる『ミントセ
白亜の神殿に行く前に、長老さんにも聞いたんですが……フィリルを旅の仲間に引き抜く為には、その会社に掛け合って直談判するしか無いと思われるんです。
「ねぇニック、いっそあの時にレイラ様に聞いておいた方が良かったですかね……」
【お姉ちゃん、レイラ様と別れてから今更思い出しても “後の祭り” だよー】
掛け合う
正直、八方塞がりでした……
でも、千載一遇のチャンスはまだワタシを見捨てて無かったんです……!
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