第101話.運命の赤い糸の真実

 もしもこの物語にチートと云う力が存在するのでしたらまさしく、このレイラ様の能力こそが……



 違う・・の?



 桜の大樹の、枝垂れた部分より根元の側の太い枝を選んでワタシとレイラ様は腰掛けます。

……あ、座れましたね。


 どうやら、神翼ウサギに呼び出された訳では無いみたい。レイラ様の能力 (チート?) で此処に連れて来られた形なので、神翼ウサギの姿は何処にも視えませんね。


 その代わり、先程からレイラ様が説明した内容がこの精神空間に広がる夜空をスクリーンに映像として流れて来ます。



【えっ、ナニ言ってるのよアカリちゃん! アナタの能力だって充分 “型破り” じゃない♪】



 へ? ワタシのココロの声、分かるんですか? どうやらレイラ様、先程のワタシの “チート” って言葉に反論したみたいなんです。



【今し方アカリちゃんがモフモフに堕ちた少女達を救ったのも “死者蘇生” と同じ位、常識的には不可能な神の御業・・・・をやって退けてるのよ! アタシも視てたんだからね、コッソリ!】



 どうしても信じられないのなら……とレイラ様はワタシのある部分を指差して。



【その証拠にアカリちゃん、今のアナタ……尻尾が生えてるわよ? 腰の下、お尻の上くらいに……アナタの世界で云う、『丹田』の後ろかしら】



 後ろを振り向くと、確かにワタシのお尻で何かがクネクネ動いてて。魂から丹田を通し、直接繋がってる何かが。



【尻尾みたいに、色のついた糸が出てるでしょ? この糸の事を、アナタの世界では確か『運命の赤い糸』って言うのよね】



 えっ、あの有名な “運命の赤い糸” って……実は尻尾だったんですか!?? しかも誰にでも視える訳では無い、ワタシにしか視えない尻尾。



【でもこの『運命の赤い糸』って、実は本来の意味とは少し違うのよ。此れ、アナタの世界では “この糸で繋がった相手と、一生を添い遂げる” って言い伝えられてるでしょ?】



 うんうん、そうなんですよぉ。ワタシの世界では、其れが常識で……ってレイラ様、何でそんな事までご存知なんですかっ?



【でも本当はそう云う恋愛成就の糸じゃ無くて、名前の通り『アナタの運命を決める』糸なのよ】



 今明かされる、衝撃の事実!!! ワタシの居た日本と異世界である此処、地上界では常識にそんなにも差異が有ったなんて……



【この運命の赤い糸、殆どの人は一生視えないままその生涯を閉じるの。そして、死ぬ直前にちょびっとだけ、運命の赤い糸が視えちゃうのよ】



 えっ? て事は、運命の赤い糸って “幸せのサイン” なんかじゃ無くて、死ぬ前に視える死相みたいな “死神のサイン” なんですかぁ?



【でも中には、極稀に例外的に……運命の赤い糸が常時視えて・・・・・生きてる人も居るの。そう、アナタみたいにね】



 あぁ、ワタシの中の『運命の赤い糸』像がガラガラと音を立てて…… 知りたかったよーな、聞きたく無かったよーな……



【良い事を教えてあげるわ。恋愛成就の要素も、実は嘘じゃ無いの。その代わり赤い糸で繋がった人とは、生涯を閉じた後生まれ変わる時に……『兄弟姉妹・・・・』として一緒になれるんだけどね】



 だから、結婚は出来ないわよ♡とレイラ様はクスクス笑って。 ……ふぅ、そうなんですよね。絶対ダメ、近親相姦。



【そして、此処からが大事な話なんだけど……死ぬ直前に視えた糸が赤いと、死後また人間として生まれ変われるの】



 えっ、運命の赤い糸の真実って “そっち系” だったんですか!?? ワタシ、あんぐりと開いた口が閉じられません。



【でもね、その殆どが『輪廻転生・・・・』する運命を辿ってるの。異世界転生するのは、糸が赤以外の色の人……その糸の色に合った種族にね】



 此れが、異世界転生の真実。確かに此れなら、異世界転生がずっと小説の中でのみ起こる絵空事・・・だったのも分かりますよ!



【アナタみたいに運命の糸が視えたまま生きてる人は、『異世界転移・・・・・』する運命なのよね。でもアナタ、運命の糸が視えたまま生きてるだけじゃ無くて……人間を指す赤い色でも無いじゃない!】



 こんな事、初めてよ?ってレイラ様もびっくりしてます。転生や転移が当たり前のこの地上界でも、見た事も聞いた事も無いって!



【しかもアナタ、その視えてる運命の糸が赤い色では無く……『シャンパンゴールド・・・・・・・・・』だなんて! 異世界の住人、どの種族とも合致しないのよ!】



 シャンパンゴールドって、ワタシの神翼の羽根の色なだけで無く……ワタシの運命の糸の色でも在ったなんて!!!




 こんな思わぬ形で、ワタシが人間では無い事が白日の許に晒されるなんて。

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