1-17 五人目のメインキャラ

 もちろん話を聞いたちい兄さまは大爆笑


「いやあ、今日一日、大変だったんだね、ジャン」


 場所は寮の部屋

 いま私がちい兄さまに、今日あった出来事を愚痴ぐちってたとこ


 ちい兄さまの私への呼び方でもわかるように、私はここでも「男の子」を続けている

 もちろん「女の子」の方が楽なんだけど

 でもそれをやっちゃったら、普段いつ何時なんどきボロが出ちゃわないとも限らない

 だから私はここでも「男の子」だし、ちい兄さまも「男の子」として扱ってくださる


「笑い事じゃありません」


 私はちょっと頬を膨らまして抗議した


「僕は学園に勉強するために来ているのです。なのに男の人から男の子として口説くどかれるなんて、いい迷惑でしかありません」

「ごめんごめん。でもちょっとおかしかったから」


 ちい兄さまは謝ってくださった。けどまだ少し笑っている


「ところで、ちい兄さま」

「なんだい、ジャン」

「もしかしてちい兄さまも、学園の中に好きな方がおられるのですか」


 うん。これはぜひ聞いておきたい

 個人的興味というのもあるけど、ここがゲーム『うるしの君たちへ』の世界なら、ゲームを有利に進めるのに、いま現在の状況はできるだけ正確に把握しておきたいからね


「うーん。まあ、どうだろうね。そのあたりはノーコメントで」

「えーっ、教えてくださらないのですか」

「あのね、ジャン。こういうのは、あまり他人にベラベラしゃべるものじゃないんだよ」


 まあ、たしかにそういうものですけど……


 また私が頬を膨らませてしまったのて、ちい兄さまは私の頭に優しく手を置いてなででてくださりながら言った


「ジャンも、もう少し大きくなったらわかるよ」


 いえ私、もう十分わかっています

 なんせ前世では26才でしたから


「ジャンはいま『男の人から口説くどかれるなんていい迷惑』と言ったけれど、もう何年かしたら、それをうれしく思うようになるんだろうな」

「いいえ。それは絶対にあり得ません」

「それは『男の子』としては、だろ。でもジャンは本当は女の子なんだし。学園を卒業したらレディになるんだろ。知っての通り、17、8で結婚するなんて珍しくないからね」


 いえ、「女の子」としてもあり得ません

 私は男女の恋愛に興味はないの

 興味あるのはBLだけ

 でもここは貴族社会。私もいずれだれかと結婚させられるんだろうな


「もしかして、ちい兄さま」

「うん?」

「私が結婚したらお寂しいの?」


 さすがにこの質問では「女の子」に戻っちゃった


「それはそうだよ。だってこんなにかわいい妹は他にはいないからね」


 まあ、お口のお上手なこと


 ところがここで、ちい兄さまは私の頭から手を離すと、真正面に向き直った

 そして私の目を真っ直ぐ見つめながら言ったの


「もしお前が妹でなく、本当に男で兄弟ではなかったら……」


 えっ? ちょっと、ちょっと待って


「僕だってお前を口説くどいていたかもしれないからね」


 途端に私の中で特大の鼓動がひとつ

 同時に首から上全体の体温が一気に……


 ちょっと! ちい兄さま、なんでことを


 ああっ。でもよく考えたらちい兄さま

 ちい兄さまも……

 『うるわしの君たちへ2』のメインキャラクターのひとりだったあ!

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