0-3 覚醒②

 ええっと、最後ね。最後。ううーん……と


 私の部屋で……

 机に向かって……

 パソコンの画面を見ている

 画面に映っているのは……


 って、思い出した!


 あの日は確か、いつもよりさんざん怒鳴られた上に嫌みもタップリ言われてむしゃくしゃしていたんだっけ

 それで普段はあんまり買わない缶チューハイをしこたま買い込んだんだった

 で、チューハイ飲みながら「ふざけんじゃねーよ」とか言いながらゲームを、大好きなBLゲームをしていたんだった

 でも記憶はそこで途切れている


 えっ、うそ。じゃあ私そのまま死んだってことなの?

 いや、やばいじゃん。私が死んでんのを見つけた人は見るんだよ


 パソコンのキーボードの上に突っ伏して

 多分白目。口も多分半開きでオマケによだれ

 床には缶チューハイの空き缶がいくつも転がっていて

 おまけにパソコンの画面に映っているのは18禁BLゲームのヤバイシーン


 うわあ。考えただけで寒気がしてきた


 缶チュ-ハイ、やめときゃ良かったかな

 いつものエナドリの方が良かったかな


 でもエナドリでもそのうちカフェイン中毒でおんなじことになっていたかも

 だけどどうせ死ぬなら、その前にあのクソ上司の野郎を一発ぐらいぶん殴ってやりたかったな


 はいはい、リセットリセット

 もう全部終わったこと

 いまさら前世でのおこないを悔やんだって仕方ない

 いまはいまの私の人生を生きるだけ


 というわけで、いまの私の現状確認


 名前はジャンヌ。ジャンヌ・ド・モンテルミエ

 今日10才になったばかりの女の子

 ド・モンテルミエ子爵の……、って、私、貴族なんだね。まあ子爵だからすごく高位ってわけでもないけど


 でも貴族は貴族

 貴族だから働く必要なんてない

 あの前世のクソ上司みたいなのに怒鳴られることもない

 たくさんのお付きの人たちに囲まれての何不自由ない暮らし

 やがて大きくなって素敵なレディになって社交界にデビューするの

 そして高貴な貴公子の目にまって……。って、ちょっと前世の私からしたら現実離れしすぎて実感が湧かないな

 第一、前世の私は恋愛なんてほとんど経験なかったし

 私が好きなのはBL。男女の恋愛なんかよりよほど崇高すうこうで素敵だわ

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