第77話:春の気立つ梅にメジロで梅次郎



 早いもので、もう、二月。


 毎年思うけど。


 一月は行き、二月は逃げ。三月は去るるん。


 三月も去れば、四月は、もう……。


 両親からも『三年生になったら』と。


 この二月、そして三月いっぱい。春休みが終わるまで。


 公園フィールドに通えるのも、それまで、かぁ……。


「……はぁ……」


「どないしたン?」


 池のほとり、フェンスの前。わたしの隣で三脚を立てる方菜かたなちゃんがわたしのため息を拾ってくれちゃう。


「あー、いやぁ、まぁ……」


 状況としては、方菜ちゃんも、蘭先輩も同じ学年。


 もう来年は大学受験……って、ふたりとも大学?


 なんて、話をしたらば。


「あー、ウチは専門学校。情報処理系の」


 ふぇー。方菜ちゃんは何やらすでに方向性が。


「私は普通に大学ですわね……両親……と言うか、お祖母様には一応出ておきなさいって言われてますしね」


 ふむふむ。状況的には蘭先輩はわたしと同じ感じかな。


 と、言うか、涼子さんの指示? やっぱりお祖母ちゃん子?



 オオタカさん待ちの時間。


 そんな雑談と言うか、世間話で盛り上がると言うか、盛り下がると言うか。


 まぁ、秒読み?



 鳥撮りはあくまでも、趣味、娯楽。


 本業は、本分は、学業。


 今でも学校での勉強はおろそかにはせず。


 それなりの成績ではあるし。高望みさえしなければ。でも。


「蘭、三年になったら勉強会の回数増やそうかー」


「それは、まぁ、いいですけど?」


 教え合う、と言うよりは、さぼらないように監視し合うって感じの勉強会。


「あ、ウチも参加すンで」


 と。


 この三人で。


 とか、話をしていたらば。



「来たっ!」


 ハトさんたちが一斉に飛び立ち。


 おなじみの、オオタカさん、飛来。


 お話は中断して、みんなカメラに飛びついて。



 オオタカしまの上を旋回して、その島の中央付近の樹の枝にとまるオオタカさん。


 旋回中の空抜けの写真は、ピントもばっちり。


 でも、青一色の背景で、絵的には微妙なのよね……せめて雲でも浮かんでくれていれば……でも、雲があると、雲にピントを持っていかれてオオタカさんにピントが合い難くなるし……むぅん、難しい。


 とか。


 考えるのも、あと、少し?


「はぁ……」


「あはは。あンま、考えン方がえぇで?」


 またわたしのため息を拾ってくれちゃう方菜ちゃん。


「そうですわ。今は今で、今を、ですわ」


 反対側からも、蘭先輩。


「ん……だね」


 気を取り直し、オオタカさんと対峙する。


 今日のオオタカさんは、アクティブ?


 すぐに、また、飛び出し!


 げ。


 しかも、こっちに向かって……。


 シャッターは切ってみるけど、森背景バックじゃ、ピントも合い難いよねぇ……。


 そしてそのオオタカさん、上空へ昇って旋回したかと思えば、急降下。


 葦原へと突っ込んで見えなくなったかと思うと、またすぐに上昇。


 再度、島の上を数度旋回して。


「行ってもたなー」


 オオタカさん、飛び去り。


 むぅん。


 急降下は速すぎて追従できず。


 撮った写真のプレビューを確認してみると。


 急降下直前に、きっちりと下方を確認している風の写真が撮れてた。


 そこからさらに遡ってみると。


 暗くてピントとブレが微妙だけど、一応、枝から飛び出した瞬間も撮れてた。


 カメラ目線? が、カッコイイ、かな? カワイイ?


 こうやって見ると、猫っぽい感じもするかなぁ……。



 とか、とか。



 まだまだ寒いケド、ちらほら、梅の花も咲き始め。


「オオタカも行っちゃったし、梅次郎行こうか」


 と、カワサキさんの一声で。


 梅の咲く丘へ。


 『梅次郎』とは?


 梅の樹、梅の花の蜜を吸いに寄る、メジロさんたちの事。


 梅にメジロで、ウメメジロ、ウメジロ、梅次郎だとか。



 おやじギャグ?



 それはともかく。


 点々と、広い範囲にぽつんぽつん、と梅の樹。


 その梅に、緑色の可愛らしい小鳥さんが、ちらりほらり、ぴょんぴょんと飛び交っている。


 すでに他の鳥撮りさんたちも、ちらほら、それを狙って撮っていらっしゃいます。


 わたしたちも空いている樹の前に陣取って、メジロさんが来てくれるのを、待つ。


 太陽を背に。


 逆光で写真を撮るのは、非常に難しい。


 完全に影になってしまうか、完全に白くなってしまうか。


 太陽を背にした方が、はっきりと撮れる。


 前に撮った太陽を背景にした影だけのハクセキレイさんとか。


 全体の絵として表現する場合は別として。


 鳥さんそのものを写すなら、太陽を背にした『順光』の方が、優しい。


 逆光は……ホント、難しいよね……。



 とか、考えてたら、メジロさんが一羽、わたしたちが陣取った樹にも来てくれたので、ぱしゃぱしゃ。


 わたしの使ってるカメラの場合、キュキュ、って感じの可愛い音なんだけど。


 ともかく。


 梅の紅い花に、鮮やかな緑の、メジロさん。



 あ。



 『梅にウグイス』って、たまに聞くことがあるけど。


 梅の樹にウグイスさんがとまることって、ほぼ、無いらしいです。


 まぁ、全く無い訳ではないだろうけど。


 梅もウグイスも、春を告げる、季節のもの。


 縁起もよさそうだし?


 でもまだウグイスさんは鳴いてはいない。


 いや、ジッジッ、って、地鳴きはしてるけど。


 ホーホケキョ、の、さえずりは、まだ、これから、かな?


 春になれば。


 春に……


「はぁ……」


永依夢エイムはン……ため息、多すぎやでー」


「あはは……」


 ってことで、とりあえず!


 梅にウグイスではなく、梅にメジロで、梅次郎。



 頂きました!




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近況ノートへのリンク

オオタカさんの飛翔&梅次郎

https://kakuyomu.jp/users/nrrn/news/16818023212984400108


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