第3話 芸能ブロダションから電話
年が明け正月が過ぎた頃、矢崎家に一本の電話が入った。電話に出た私は、これが母だったら問答無用で切られていただろう。
「もしもし、矢崎ですが」
「私、あの芸能ブロダションの者ですが美咲さんでしょうか」
「ああ、あの原宿で声を掛けてくれた方ですか、まさか本当に連絡が来ると思ってなかったので驚きです」
「突然申し訳ありません。出来れば今度そちらに伺い、ご両親を交えて相談に伺いたいと思いまして連絡至ました」
「それはどうも、実はいま兄が交通事故に合い、そんな状況ではないのです」
「ああそうですか、それはお気の毒に分かりました。では今度落ち着いた時に連絡差し上げます」
確かにタイミングが悪い、いやそもそも本当に連絡が来るとは思わなかった。母が聞いた物凄い剣幕で怒るが姿が浮かぶ。しかし矢崎家は深刻だ。兄の入院は母と私に重く乗り掛かって来る。いよいよ経済的に追い詰められた。私は恐る恐る母に先日プロダションから電話が合ったことを伝えた。
「なに? 本当に電話が来たのかい。まさか本気とはねぇ。でも今はそれどころじゃないなだろう。美咲も分かっているわね」
「確かにそうだけど、信じられない事を言いだしたのよ」
「なんだい、まさか脅かされたんじゃないだろうね」
「まさか、それが契約金を出すからどうだろうと言うの」
「えっ契約金? 金を取るのじゃなく金をくれるというのかい」
「詳しくは分からないけど一度会って欲しいと」
つづく
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