第36話 源さんのステータス

「えーっと……つまり? 魔物が私に取り憑いてて? それが見えていたメマちゃんが私を怖がっていた。で、それを哲平さんが"あっち行けー"で倒しちゃったと。そう言いたい訳?」

「あの、はい。そうですね」



 ドンッッッ!!!



 ひぃいぃっ!



「そんなゲームの話を聞いてるんじゃないのよ!! 本当の事を話しなさい!!!」



 俺は今、店内の床にて正座をしていた。カウンターには、カンカンにお怒りの右京さん、それを目を見開いて見ている源さん、紙にステータスを一生懸命書いてるメマの姿がある。



「いや、本当なんですって。だから右京さんも『ステータス』って言ってみて下さいよ。多分自分の目の前に半透明な

「あー!! うるさいうるさいうるさい!!!」



 右京さんは頭を抱え、ブンブンと頭を横に振った。



「し、知ってるでしょ? 今アメリカで『異世界の扉』が開かれてるって? それを考えれば自分でもステータスが見れるってのも結構納得出来ると思うんですけど……」

「で、でも、自分のステータスが見れるなんて……なんか、その……」



 ん? どうしたんだ?



 俺が言う様に促すと、右京さんは少しモジモジとしながら指を絡め始める。



「ステータス……ん? 俺は見れないのか、哲平?」



 そんな時、右京さんの横でステータスと言う源さん。



「源さんは多分まだ魔物とかと関わりがないから見えない? と思う」

「まもの? って何だ?」

「あーっと……他の世界から来た動物とかとは違う生物? なのかな?」

「? 動物とは違うのか?」

「え、あー……」



 もう、説明すんのも面倒だな。



「こっち来てくれた方早いわ」

「ん?」

「ちょっとついて来てくれる? 魔物を見せるよ」

「お、近くに居るのか?」



 モジモジしている右京さんを置いて、俺は源さんと共に外に出る。そして、ある所に向かっている途中。



「天峯は昔から新しいものをする事に抵抗がある、所謂昔の人なんだ。あんな事言われて簡単に納得出来ねぇだけで、少し混乱してるだけなんだ。許してやってくれ」



 へぇ。そんなの見た目からは想像出来ないな。あんな若い見た目してるのにアナログ派……と言えばいいのか、意外である。



「全然気にしてないよ、別に。ああいうのは比奈で慣れてる」

「……それは慣れてはいけない気がするぞ」



 そんな会話を続けながらも、俺達の目的地であるトイレへと着く。



「何だ? トイレに居るのか?」

「まぁね……エースさーん! ちょっと出て来てくれるー?」



 俺はトイレの扉を開けて、叫ぶ。すると、スルスルスルっと、青い触手が何本か便器の縁につく。



 ポヨンッ



 そして、エースさんが地面と可愛い効果音を鳴らしながら登場する。



「うおっ!? な! 何だこいつは!?」

「スライムのエースさん。これが魔物なんだ」

「お、おぉ……なるほどな。こりゃ、動物とは違うなぁ」



 源さんはマジマジとエースさんを観察した後、「お、何か声が聞こえたぞ……取り敢えず触ってみても良いか?」と聞いて来る。すると、それを察したのかエースさんが源さんに触手を伸ばす。


 恐らく源さんが言った声と言うのは『異世界との交流がーー』とかのやつだろう。



「お、まさか言葉が分かるのか? その、よろしくな。俺は源だ」



 源さんとエースさんは柔らかく握手を交わす……交わしてしまった。



 い、一応毎晩帰る前にエースさんの事を綺麗に拭いてはいるから大丈夫、大丈夫な筈だ。


 俺はポケットから出そうとしてたゴム手袋をまたしまい直す。



「源さん、ステータスボードは見られる様になった?」

「ん? おぉ! 見てみるか! 『ステータス』!」



 源さんは元気に『ステータス』と叫んだ後、目を細めて前のめりになる。



「……ちょっと見づらいが、こう書いてるな」





 name:佐々木 源

 skill:建築 工芸 作製 

 title:天才大工





 なんか、普通にカッケェ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る