じいちゃんから譲られた土地に店を開いた。そしたら限界集落だった店の周りが都会になっていた。

ゆうらしあ

第1章 店を作ろう

第1話 土地譲られた

 その日の雲は、俺の人生の様に随分速く流れる雲だった。



「はぁ、どうするかなぁ」



 椎名哲平は田舎に住む28歳独身男。そんな俺はない頭を働かせていた。


 目の前には、自分よりも高い2メートル超の草が約50メートル四方にボウボウと生え揃い、それを大きな木々が取り囲んだ土地が広がっている。



「何をするにしても……早めに決めないといけないよなぁ」



 5月下旬、段々と日差しが強くなって来た今日この頃。先日、俺はGW中に死んだじいちゃんからある土地を譲り受けた。


 それも、"俺の実家から森の方に100メートル程進んだ所にある土地に"である。


 土地というのは所有・管理するのにも金が掛かる。持っていても何かに使わなければ搾取されるだけの、無意味な私有地。



(何か利用するにも、なぁ?)



 まず周りには何も無い。家どころか建物が無く、人を探すよりも動物を探した方が早いんじゃないかと思えるレベル。


 最初は土地にソーラーパネルでも設置しようと思ったのだがーー



「草はテキトーに鎌で刈るとして…周りの木を伐採するのは面倒だしな……」



 工場勤務で凡人の俺には、凄いアイディアなんて思い浮かばない。



「…………そうだ」



 これはきっと人生の転機に違いない。

 貯金は貯まるばかりの人生。昔からもし出来たらやってみたいなっと思っていた事もあった。



「カフェやろう。テキトーに」



 そう思ったら早かった。まずすぐに工場を辞めた。辞めるのに1ヶ月掛かるのだが、次の日に会社に行くと今までの有給を申請し、その日の内にカフェの設立を開始した。



「まずは草刈りー…っと」



 俺は、実家から持って来た麦わら帽子を被り、鎌を片手にしゃがみ込むのだった。

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