詐欺師5
京一の話によると“探偵潰しの発端や主犯”を追い詰めるための囮。兼二に相談し協力してもらっていたが辿り着いたのは探偵の中に偽探偵の存在。
和に仕事を依頼する前から何者かに尾行やストーカー行為と続いており、振りきって仕事を頼んだのはいいが和が起こしたジェットコースターの事故で大きくことが動いたらしい。
「ごめんね。俺が京ちゃんを追い込んだわけか」
『きにしてねぇーっす』
「でも、結局アッチも協力者で主犯じゃないんでしょ」
『そうなんすよねぇ。自分の探偵事務所のやつらは白なんで違うんすけど。旦那に話してましたっけ、探偵カフェ兼事務所なんで客の出入りが激しくて“それ”に紛れてたんすかね。レンタル人間とか莫大な金で買われたバカとか』
京一の言葉に和は溜め息。
「京ちゃん、傷痛むだろうけど仕事頼んでもいい? 勝使ってもいいから」
『いいスッよ。狂犬と仲良くなって今、散歩してるんす』
「そう。じゃあ……今写真送るから見たことある人いる? 俺は何人かいるんだけど京ちゃんと意見が一致するなら確定だから」
『りょーかい。っか、旦那。自分、嘘つきました。今、事務所前っす』
「だよねぇ。こんな真夜中に病院が散歩許してくれるはずないし」
電話しながら立ち上がり、窓から下を覗くと旦那~と跳び跳ねる京一。缶ビール飲み手を上げる勝の姿があった。
「探偵の中に偽物か。まぁ、カチコミ話が流れてたから早々病院出てきたのは正解だったな。糞探偵」
事務所に入るや否や小言。勝は腹部を抑え痛そうに凭れてくる京一が可愛いのか頭に手を乗せ髪の毛を乱す。それに負けたと感じているのかムッとするも溜め息。
「狂犬の指示に従うの嫌なんすけど。裏に詳しいのコイツなんで今回ばかりは頼るしかねーと思いまして。解決するまで狂犬の傍にいまっせ」
座りなよ、とソファーに案内すると腰かけ勝の腕にしがみつく京一。だいぶ仲良くなったのか遠くから見ると兄弟に見える。散らかったテーブルを片付け、改め写真を並べ見せる。
「寝取られないよう気を付けなよ、京ちゃん。勝って年下好きだから」
「大丈夫っすよ、旦那。さっき俺のストーカーをストーカーでやり返して沈めたんで」
京一の言葉に勝は親指を立て笑顔。和は、沈めた、と苦笑するも楽しそうな二人に微笑む。
「あら~勝。気に入っちゃって。まぁ、いいよ。俺には兼二が――」
笑顔で兼二に顔を向けるも鮭とばを咥え、さっさと話進めろよ。お前のために徹夜してんだぞ、と殺気放つ目付きに逸らす。
「で、何の話してたっけ」
しばらく写真と見つめ合い、悩みながら京一が手に取ったのは一人の女性。歳は分からないが焦げ茶でロングヘアーの見た目清楚。胸が開くような大胆なドレス。時にはラメの入った高級ブランドの服を身につけ同伴。数回通い、和が撮った写真。席には付かなかったか和いわく“顔見知り”だとか。
和の言葉に三人の目付きが変わる。職務質問かと思いたくなるような空気。質問が飛ぶ。
「番号まだあるんすか?」と京一。
「ない」
「セフレ?」と勝。
「俺、勝みたいに性欲無いから。おじさんレンタルだよ」
“おじさんレンタル”聞きなれない言葉と変な想像に一斉にブッと笑い出す三人。失礼な、と和か拗ねると兼二。
「いつ会った」
「一年前かな。いや、二年前。その前に受けた子が知り合いみたいで“イケおじ”って呼ばれて接待したんだよなぁ。まぁ、俺も性的なのは禁止だし。キスとかもそうだけど設定は覚えてる。同伴的なやつ」
真面目に話すも彼らの耳に残ったのは“人間レンタルサービス”の話ではなく“イケおじ”。和がイケおじ――三人は和を見てブッと笑いを堪える。
「ちょっと此方は真面目に話してるんだから」
ツボったか話が進まず。分かった。、笑いたきゃ笑えよ、と気分転換にタバコを吸おうと事務所に外へ。
ドアに凭れてタバコを咥え、大嫌いな火をジッポライターで点けると軽く目を背けながら着火。ふぅーと煙を吐き深呼吸。
「あーあの子ねぇ。忘れるわけないじゃん。メッチャいい子で二十後半成り立てだったかなぁ。あんないい子が……詐欺師か」
半笑いでタバコを咥え、考えても仕方ないか。止め止め、と頭を振りタバコをV字に折った。
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