第25話.新しい騎士団長
ホーク盗賊団との激闘が終わり、数ヶ月がたちリュート達の傷も癒えてきた。少しずつ訓練を開始しようとしている中、その問題は起きた
「皆の者、今日は時間を取ってもらって悪いが、皆に相談したいことがある」
開始早々、ストーンが深刻な顔で話し始める
「実は前回のホーク討伐の一線で私の足はバカになってしまったらしい。普段の生活をする分には支障はないのだが以前のように動くことは叶わないであろう。」
確かにストーンの左足はホークの一戦以来引きずるようになってはいたが、ほとんどのものが重傷だったため、あんまり気にしてはいなかったが、どうやらストーンの足は相当悪いらしい。
「そこで色々考えたんだが、いい機会なので、私は引退しようと思う。」
「ストーン様!!」
ストーンの突然の発言に動揺を隠せない団員達。色々なところからストーンに辞めないでほしいとの悲願の声が飛び交う。
「皆が私のことをそこまで思ってくれるの嬉しい。しかし、以前のように動けなくなってしまった以上、これからの私はきっと皆の足かせになるであろう。そのことを考えたら時期的にはちょうどいいのかと思ってな…」
ストーンは自分が引退するまでに至った経緯を皆に話し始めた。ホークとの一戦で感じた限界、そして、同じくホークとの一戦で自分がいなくともこの騎士団をやっていけるという確信。様々な考えを話し始めた。団員達はそれを黙って聞いていた。
「そういうこともあり私は引退を決意したのだ。そこで皆の者に聞きたい。次の団長になるのに相応しい者は誰であろう?」
「はい、ストーン様よろしいでしょうか?」
ストーンの問いにロベルトが手を上げる。その姿を見て、誰もが納得したであろう。ロベルトは若く有能で、その上人望も厚い。多少若すぎるところはあるかもしれないが騎士団団長として申し分ない実力を備えている。
「ロベルト、キミが騎士団長に立候補するという形でよろしいか?」
「いえ、違います。」
ストーンの問いに対しロベルトが発した言葉は驚きの言葉だった。
「キミが立候補しない?では、君が思う新しい騎士団長は誰なのかい?」
「はい、私はリュートを推します」
「えっ俺!!」
「リュート、お前は黙っていなさい。」
突然のことに驚き、声を上げるリュートをたしなめるストーン
「ロベルトはリュートを推しているが、その理由はなんだね?」
「はい、とても簡単なことです。ホークの一戦、我々はストーン様とハウル隊長が倒れた時に勝利を諦めました」
「うむ…」
「しかし、その中で言うとただ1人リュートだけが勝利を諦めていませんでした。そして、その姿に私たちは力をもらいました。その結果、私たちはホーク達に勝つことができたのです」
「ロベルト、キミの言う事はもっともだが、リュートはまだ若い。それにリュートと比べ、君は人望も厚い上に判断力も素晴らしい。」
「ストーン様にそう言って頂けるのは大変光栄ですか、現状リュートより私の方が勝っているところがあったとしても私には同じことが起きても、その時の状況を変える力はありません。」
「うむ」
「今後も騎士団がピンチになる事はあるでしょう。その時に、騎士団員全員を奮い立たせる、その様な男が次の騎士団長になるべきだと私は思います」
「そうかロベルト、キミの意見はわかった。他には誰か意見のある者はいるかな?」
「僕も、僕もロベルトの意見に賛成です。リュートがロベルトより上の人間だとは思えないけど、でも確かに僕もあの時リュートに言葉に力をもらいました」
ストーンの問いかけにポルカが答える。ポルカの答えは、お世辞にもリュート支持している言葉ではなかったがその分だけ気持ちが強く伝わった。ポルカのその話を聞いた団員達は同じようにあの時の状況を語り始めた。皆ストーンとハウルが倒れた時点で勝利を諦めていたらしい。そんな中1人足掻くリュートを見てどれだけ力がみなぎったか、個々に語り始めた。
「確かにロベルトは素晴らしい。判断力も人望も頼りがいもある。それと比べるとリュートに物足りなさは確かにある。だが、あいつの声を聞くと何故か力が出る。あいつの声を聞くと、頑張ろうと気になる」
1人の団員がそう語った。それを区切りに団員達からはリュートを推す声が発せられた。いつしかあたり一面リュートコールになっていた。
「皆からリュートの声が上がっているが、リュート自身はどうなんだ?」
ストーンがリュートに問いかける。
「俺…俺は…」
その問いに対し、戸惑うリュート。その顔を見て、ロベルトがリュートに話しかける。
「リュート大丈夫だ。何かあった時は俺達がサポートする。だから、お前は今まで通り俺達の事を導いてくれ」
「ロベルト…わかったよ、俺やってみるよ!」
こうしてリュートは王宮騎士団の新しい団長になった。ストーンが騎士団を離れるならとハウルも一緒に引退をするということになり、これによりロベルトも守備隊隊長兼騎士団副長を務めることになった。
リュートが騎士団長になってから初めての王宮での食事会が開かれ、その席でエリザに告白され、リュートとエリザは付き合うことになった。ネメシスはただ1人娘はやらん!といきり立っていたが、エリザとロザリアに端へと追いやられ、端でひとり拗ねていた。
一時の幸せを味わう中、ある噂が国中をざわつかせた。
ヴォルグが殺されたと…
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