第12話.どうするべき?
その日は珍しくロベルトと2人だった。
「なぁ?ハヤト…」
「何ロベルト?」
「お前、前に村が滅ぼされて話してくれただろ?」
「うん。」
「じゃあ、お前はもうそいつらに対して恨みは何も持っていないのか?」
「う~ん…恨みを持っていないと言ったら嘘になると思う。でもね。俺、ストーン達と約束したんだ。」
「どんな約束だ?」
「ロザリオおばちゃんのためにまっすぐ生きるって」
「まっすぐ?」
「うん。だから、恨んでいない訳ではないんだけど、復讐心で行動するのはやめようって決めたんだ。」
「そうか…」
ロベルトの表情はどこ悲しそうに見えた。
「でもなんでそんなこと聞くの?」
「ハヤト、実は俺も盗賊に村を滅ぼされているんだ…」
「えっロベルトもヴォルグに!」
「いや、ヴォルグではない。」
「ヴォルグ以外にも盗賊はいるの!」
「あぁ、たくさんいるよ。」
「そっか、知らなかった…」
ロベルトからバルサニア国に関することを教えてもらった。バルサニア王国のほとんどは民族によって住む場所が決まっているらしく、バルサの民は王都もしくはその周りに村を作り、オーダーはこの国の様々なところに村を持つ、ギャンサーに関しては村などの拠点を作ることは少なく、どちらかというと洞窟のような場所を拠点にし、様々な場所に移動を繰り返し生活をしている。そのため、ギャンサーは常に食糧不足に陥り他の村を襲い、食料不足を解決しているらしい。ロベルトに関してはギャンサーには珍しく村を持ち、そこを拠点に暮らしていたが、同じギャンサーの盗賊に村を襲われロベルト一家だけがなんとか逃げ切る事ができ、その時に騎士団に助けられ王都に住むようになったらしい。
「そっか…ロベルトも同じ境遇だったんだね。」
「あぁ…でも、みんなには言うなよ、お前にしか教えてないから」
「そうなのかい、なんで俺にだけ教えてくれたの?」
ロベルトは黙り込んだ。何度か話しかけようと口を開くか、そのために黙り込む。その表情に心配したハヤトは
「なんだよ、なんでも言ってくれよ?ここまで聞いたんだから、俺できることは何でもするよ。」
「本当か?」
ロベルトの顔がぱっと輝く
「任せてよ。」
「そっか。じゃあ思い切って相談するのだが…俺を王宮騎士団に入れてくれるよう、ストーン様に頼んでくれないか?」
「王宮騎士団!」
「あぁ…俺は自分のような人間を作りたくない。そして、できることであるのならば、俺の村を滅ぼしたあいつに復讐をしたい。」
「でも、ロベルト、俺が言うセリフじゃないけど、復讐は何も生まないよ。」
「わかっている。だから復讐はメインではない。あくまで機会があればの話だ。」
「ふ~ん…そっか…」
「だから、剣術を学んでいざという時に皆を助けられるような人間になりたいんだ。でも俺は剣術を知らない。だから王宮騎士団に入りたいんだ。」
「う~ん…」
ハヤトは考えた。確かにロベルトの言う事は間違ってはいない。同じ境遇の人を助けようにも、自分だけじゃ何も出来ないことは、実際にやったことのあるハヤトであれば身に染みるほどわかっている。だが同時に復讐の心を簡単に取ることもできないことも誰よりもよく分かっている。今、目の前にいる友人が道をはずれてしまった場合どうすればいいのか?その場合自分は止めることができるのか?考えてみたが答えが出ない。黙りながら考え込むハヤト見て、ロベルトかもう一度頼み込む。
「頼む、ハヤト…せめてストーン様に話だけでもしてみてくれ。」
「うん。わかったよ。」
「本当か?ハヤトありがとう!」
深々と頭を下げるロベルトを見て、ハヤトは1度ストーンに相談してみることにした。
「ねぇ、ストーンちょっといいかな?」
「どうした少年?」
「ロベルトって友達がいるんだけどさ、それのことについてちょっと相談があって…」
「ロベルトってあのギャンサーの体の大きい子かい?」
ロベルトの名前を聞いて、ロザリアが話に入ってくる。
「うん、そうそいつのことについてちょっと相談があってさ…」
「なんだい、まさかいじめられたりしたのかい?」
ロザリアが心配そうにハヤトに話しかけてくる。
「違う、違うよ。ロベルトはすごくいい奴だよ。」
「そうかい、それは良かった。じゃあ、その相談って何なのさ」
ハヤトの答えを聞き笑顔を見せるロザリア。そして、ハヤトにそう質問をしてきた。これではまるでストーンに相談しているのではなく、ロザリアに相談しているようだ。ハヤトはそれとなくストーンの顔を見てみたが、無表情で何を考えているのかわからない。このままではらちが明かないので、ロザリアに相談する形で、ストーンに聞いてもらうことにした。
「あのね、ロベルトがさ、王国騎士団に入りたいって言ってるんだよ。でもね…」
ハヤトは昼の話を2人に聞かせた。ロベルトがハヤトと同じく村を滅ばせられた人間であること、ストーンは騎士団長なのでもちろん知っていたが、ロザリアに関しては初耳らしくかなり驚いていた。そして、自分と同じ境遇を持っている人達を助けるために、騎士団に入りたいと思っていること、しかし、復讐心を完全に忘れきれていないこと、自分のことを考えた上で、自分1人の考えでは答えが出ず2人に相談しようと思ったこと全てを相談した。
「偉い!あんたは本当に偉いよ。」
そう言いながら、ロザリアが飛びつきハヤトの頭を撫でてきた。
「もうやめてよ。ロザリアおばちゃん…」
ハヤトも照れながらも抵抗はしない。ストーンの方を見ていると、いつも仏頂面のストーンも珍しく笑っていた。
「そうか、少年は本当に大人になったな…」
「そんなことないよ。もし俺が本当に大人だったら自分で解決する案を出せたはずだから。」
ストーンに褒められたことが嬉しかったのであろう。ハヤトも満面の笑みを見せながらストーンにそう返す。
「そんなことないよハヤト、自分ひとりでは無理だとわかった時点で人に頼り相談する。以前のあんたじゃ考えられないことだ。あんたは確実に大人になってる。」
頭を撫でながらロザリアがそういう。
「ロザリアはロベルトのことを知っているのか?」
「あぁ、私は何度か会ったことがあるよ。」
「どんな少年なのだ?」
「う~ん…なんていうか、大人びた感じの少年だね。体もすごく大きい。あと、あんたみたいで仏頂面だよ。」
「確かに!」
思わずロザリアと一緒になり笑ってしまうハヤト。それをストーンが苦虫を噛み潰したような顔で見る。いつもの風景だ。ストーンはしばらく悩んでいたか、ハヤトの願いを聞いてあげることにした。
「そうか、では1度会ってみよう。」
「いいの?」
「あぁ、話で聞くよりも1度その後を直接見た方がよさそうだしな」
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