第18話 p.7
「では、質問です!」
「質問?」
「夕立とゲリラ豪雨の違いは、何でしょうか?」
「えっ? う〜ん。なんだろう?」
不意を突かれた私は、思わずフォークを咥えたまま、窓を睨む。窓は、強い雨粒に打たれて、滝のように水が流れ落ちていた。
最近、ゲリラ豪雨ってよく聞くけど、アレって、物凄く激しい雨のことだよね。
じゃあ、夕立は、どうだろう。私の中では、夕立もザッと激しめの雨が降る気がするのだが。
二つの雨に違いがあるとすれば……
彼は、無言で考えを巡らす私の口からフォークを抜き取ると、ニコニコとしながら、パンケーキを一口パクリ。
美味しそうにパンケーキを十分に味わってから、彼は、私に回答を催促した。
「答えは、分かった?」
「う〜ん。雨の降る長さ……とか? あ〜、でも、わかんない!!」
私は、唇を尖らせ、頬杖をつく。そんな私に、彼は、にこやかに声を放つ。
「惜しい!!」
そう言うと彼は、勿体つけるかのように、コップに口をつける。彼の態度に、つい気持ちがジリジリとしてしまう。
「で、答えは?」
その場を楽しむ彼と、先が気になる私。なんだか、ちぐはぐな二人のような気がするが、これで案外上手くいっているのである。
彼は、楽しそうに、たっぷりと溜めを作り、私がこれ以上は待てないと痺れを切らすギリギリを見計らって口を開いた。
「ゲリラ豪雨と言う言葉をここ数年でよく耳にする様になったけど、実は、予報用語ではないんだ」
「えっ?」
「そもそも、気象庁では、ゲリラ豪雨という言葉自体が定義されていない。だから、『夕立とゲリラ豪雨の違いは何?』と聞かれても、答えるのはとても難しいんだ」
「なにそれ〜!! じゃあ、ゲリラ豪雨ってなんなのよ?」
彼の言葉に、私は、さらに唇を尖らせる。
「ゲリラ豪雨と言う呼び名は、気象庁では定義付けされていないのだけれど、マスコミや民間の気象予報をする所では、ある程度定義がなされているよ。まず、ゲリラ豪雨は、基本的には、夕立と同じようなシステムで発生するんだ。上空の大気の状態が不安定で、積乱雲がどこで発生してもおかしくない状況下で起こる。ただ、夕立は数十分で止んで、大きな災害を起こすようなことはないけれど、ゲリラ豪雨の場合は、激しい雨が1時間以上にわたって降り続き、大きな災害をもたらす恐れがある」
彼の口から、沢山の言葉が流れるように出てくる。そのほとんどを、聞き漏らしてしまったが、最後の部分だけは、しっかりと捕まえる。
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