天気オタクと雨宿りカフェ

第12話 p.1

 久しぶりのお昼間デート。映画館から出て来たところで、ちょっと浮かれて彼の横顔を盗み見る。お疲れ気味なのか、少し眠そうにしているところがかわいいな、なんて思ったり……。


 最近は、お互い仕事が忙しく、休日は家でゴロゴロと過ごす、いわゆるおうちデートがほとんどだった。


 それに、今年の夏の暑さと言ったら、尋常じゃないっ!!


 連日、猛暑日を記録しており、昨日は、猛暑を通り越して、酷暑にまでなったらしい。


 太陽は、私の肌をジリジリと焼くどころか、素早くジュウっと焼いて、それから、蒸し焼きにして、旨味を閉じ込めてやる、とでも言い出しそうなほどに、鋭い紫外線と、耐え難い熱風を私に差し向けてくる。


 だから、命の危険を感じる日中は、とてもじゃないけれど、出歩く気にはならないのだ。


 それ故に、お昼間デートは、必然的に封印され、クーラーの効いた快適空間に篭らざるを得なかったという訳である。


 致し方なく快適空間に篭っていた訳だが、そんな生活が嫌かと聞かれると、決してそう言う訳ではない。


 快適空間で、ダラダラゴロゴロすることは、至福の喜びだと思っている。


 ……思ってはいるのだが……


 やはり、たまには外に出て、映画やショッピングデートがしたくなる。こんなに暑いなら、プールデートもいいかもなぁと思いつつ、視線を少し下に向けると、大きな肉壁に阻まれるので、プールデートは、残念ながら、なしなしなし。


 でも、やっぱりどこかに行きたいよぉ〜という、私のわがままで、本日は、太陽に負けじと、お昼間デートを決行中。


 しかし、唯一無二の太陽に勝つなんてことは出来るはずもなく、私たちは、早々に映画館へ避難。結局、快適空間でランチを食べて、この夏、とても話題になっているアニメ映画をたっぷり2時間半堪能して、ようやく太陽の下へ戻って来た。


 映画館の空調は、私には、少し強め。すっかり冷えた体を、彼にくっつけて歩いている。


 すると、彼がピタリと止まり、スンと鼻を鳴らしてから、空を見上げた。私もつられて空を見る。


 相変わらず眩しいくらいの太陽と、水色に白い入道雲がよく映える、いわゆる、夏空が広がっていた。


 あの雲、綿菓子みたいだなぁと、毎年1度は思う事を今年も考えていると、不意に彼が口を開く。


「ねぇ、近くにカフェないかな?」


 彼の顔を見ると、先ほどかわいいと思った、眠たそうなお顔はどこへいったのやら。


 少しだけ眉を顰め、ジッと空を見つめている。

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