第51話 季節は巡る(前半)
「……ここで合ってるんだよな?」
俺はゆっくりと視線を上げる。
雲一つない快晴、なのに爽やかな風が吹く季節に俺は思わず顔をしかめてしまった。
「あっつい……こんな天候で海に現地集合って……」
予定よりも早く着いてしまったのか、広い砂浜が見える海岸線でひとりぼっちだ。
汗ばむ額を手の甲で拭き取りながら、みんなの到着を待つ。
「おーい、そこの制服着てる人〜! お、やっぱりネクだ。集まってんのまだアタシらだけ?」
「プルシャ先輩……露出がいつもより凄いし、日焼けもしました?」
「まあね。アタシすぐ脱げるようにしてっから! 楽しみでしょ〜?」
「あはは……」
相変わらずプルシャ先輩はテンション高いなあ……。
普段よりも格好もパーカー一枚だけとかなり身軽そうだ。
この下に水着……どんなのを着てるんだろう?
派手そうだなあ……。
何となく愛想笑いをしていると、プルシャ先輩は俺の背中を叩き、肩を組んではニヤけながら話し始めた。
「もっと笑いなって! 今回の旅行はアンタとメルシー先輩のためみたいなもんなのよ?」
「……そういえばどうなんですか? メルシー先輩とは」
「ええっ!? それはもうね……凄いよ? アンタには言えないことばっかりやっちゃってるから!」
「ふぅーん、たとえばどんなこと? ウチが知らないことも知ってそうじゃん」
「メ、メルシーしゃん!? これは後輩に聞かれたからついつい意地張ってしまっただけで……でっか……」
「……でっか?」
青ざめた顔のプルシャ先輩の目線の先には、腕を組んで仁王立ちのメルシー先輩が立ち構えていた。
服装は当然のように水着であるため、プルシャ先輩が言う『でっか』はそういうことなのだろう。
ファッションについて疎いので詳しくは語れないが、メルシー先輩の黒色の水着はコルセットのような形状で凄く大人っぽい。
「……感想それだけ? ってかプルシャもジジ臭い反応だな、どした?」
「あー……プルシャ先輩は完全に興奮しちゃってますね、あなたの格好がド派手だったので」
「そっか。ウチは別に良いけどさーネク、アンタ彼女にはちゃんと口にして喋りなよ?」
「メルシー先輩だけですからね、何も話さなくても会話になるのは」
あと二人……時間的にそろそろ到着すると思うが……。
などと考えているうちに彼らはすぐにやってくる。
「みなさ〜〜ん! 遅れてすみませーーん!」
「ローズ〜! お、ギルも一緒だ〜」
「先輩達元気ですね……僕とローズさんはここまでくるだけでへたばりそうになっているというのに」
「俺も同意見だよ、ギルバート君……」
ギルバート君とローズも服の下に水着を着込んでいるようでいつもとは違う格好に、なんだか胸が躍ってくる。
「これで部員が全員揃ったし……乗り込むかか、ビーチ」
そう言うとメルシー先輩は俺達を率いて、砂浜へと歩き始めた。
──あの事件から一ヶ月、俺達の周りは変化せざるを得なかった。
まずはじめに、正式に恋愛相談部が復活したこと。
この理由はバラン理事長が辞任したことがきっかけだ。
オリアスの魔法で幽閉されていた理事長は、身体に深い怪我を負い一時的に学園から離脱していたのだが、先日復帰が難しいと判断し自ら代役を立てて辞めてしまった。
それから個人的に連絡を取り合った結果、部活動として活動を続けた方が世間体が良いとなり、俺とローズに加えて結界魔法に飛び込んだ三人で部活動を再開し始めたのだ。
あの事件は結局革命と呼ぶには稚拙な襲撃に過ぎず、一月もしない間に学園にはいつもの日常が訪れだした。
セレス君の遺体も背中以外傷一つなく遺族に届けられ、葬式には大勢の人が参列していた。
セレス君のことは今でも後悔ばかりだが、彼の両親から感謝されたときを思い出すたびに複雑な気持ちになる。
「ネク君今日は元気ないね。もしかして緊張してるのかな?」
「どうだろう、いきなり俺の魔力が暴走しちゃうかも」
「あはは、ネク君も冗談言うんだね!」
「……ネクさん! ちょっと来てください……!」
そう言ってローズは制服の袖を引っ張り、俺を茂みへと誘う。
振り返ってみんなの方を向いてもギルバート君が手を振るだけだった。
完璧に周囲から人の気配が消えたの彼女は確認した後に、こちらを振り向き恥ずかしそうに口を開いた。
「ネクさん……こっち見てくださいっ!」
「ずっと見てるよ……ってローズ!?」
……やっと袖を離したかと思えば、今度は自らの服を唐突に脱ぎ始める。
私服の中からは、これでもかと可愛さを協調した水着が現れた。
「ひょ、評価ください! 私の……水着について……です!」
「評価……? 胸のリボンとか凄く可愛いし、下のスカートも似合ってる」
「それって見えたものそのまま言ってるだけじゃないですか! それだけじゃ物足りません! もっと! もーっとください!」
いつもとは違う様子で顔を近づけ、俺の反応を楽しそうに待ち望んでいるようだ。
しかし、そう言われても何と言えば良いのか……。
胸の中央にある大きめなリボンが人形みたいに小柄なローズを引き立たせていることも伝えたし、いつもの制服よりも少し短めのスカートが綺麗な足を目立つようにしていて可愛いのも上手く伝わってないようだし……何といえば良いんだ……?
「こうなったら……私が思い浮かばなくなるまでネクさんの水着姿を褒め倒しますから! 脱いで……くださいッ!」
ガッ、と腰の部分に体重がかかる。
そして彼女は俺のズボンを造作もなくずり下ろし、俺の下着があらわとなった。
「まず一つ……随分と可愛らしい水着なんですね! びっくりしました! まるで下着みたいに──」
「──パンツだよっこれは! 水着じゃなくて!」
「……このパターンは、予想……してなかったです!」
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