昔書いた小説に「♡」がついた

 数年前の作品に「♡」がついた。


 カクヨムからの通知。表示されていた「読者からの応援があります」の一文に、わずかながらに心を躍らせる。


 はたしてどの作品だろうか、と詳細を確認。そこには数年前に書いた小説のタイトルが。


 何年も前の作品だったので、題名だけではどんな作品だったのかを思い出すこともできなかった。拙作を読み返すと恥ずかしくなるので逡巡したが、せっかくなので読んでみることに。


 その結果、読み終えた僕の心に生まれたのは感動と悔しさだった。


 驚くべきことに、今の僕が書いている作品よりもうんと面白いと思ってしまった。


 文章的にはぜんぜんなってないし、やや理解しがたいところもある。それなのに、読んでいて引き込まれるような感覚を覚える。


 文体がどうとかテンプレがどうとかなんてその頃は一切考えていなくて。ただただ書きたいものを書きたいように書いていた。結果として、当時の僕の趣味嗜好がふんだんに盛り込まれている作品となっていた。


 書いた当人だから、というのもあるのかもしれない。バイアスがかかって良い作品に見えるのかもしれない。


 それでも、なんというか、「作中の登場人物の息づかい」のようなものが伝わってきたのだ。


 創作をはじめて数年。


 少しずつ力を付けてきていると思っていたのに、今の僕では昔の僕の感情描写に遠く劣る。


 これで悔しがらずにいられるだろうか。


 過去の僕に奮い立たせられ、今夜も僕はモニターを前に筆を執るのだった。

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