第7話 まっくろけ
二歳
うららかな昼のこと。
うたた寝をした隙にホームセンターで購入し付けていた、引き出しのストッパーを外していた。
ちなみに一段階のものではない。
三段階あるやつである。
それを、開けていた。
さらに。
そこに鎮座していた万年筆用のインクを、開けたようである。
インクが海のようだ。
幼児は真っ黒けである。
手も足も、そして床も黒く染まっている。
一面、海原である。
いきおい出航したようだ。
ダメだよと言いつつ(まだしっかりとした理解をする発達段階でもない為、移動させて物理的に遠ざけた)、けどそういうものだからと、片付けに入る。
せめて起きている時に、模造紙の上ででもやってもらえたら死蔵品のインクも浮かばれただろうに。
やくたいないことを思った。
けれど、こうしたちょっとしたいたずらができるうちが花である。
できる体と思考能力があるからできるのである。
※ ※ ※
テレビ台周りを囲っていた、ベビーフェンスを自力で乗り越えた。
この幼児、身体能力鰻上りである。
跨ぐと足なぞ十センチ以上も、上である。
お陰で、お風呂どき腹筋の筋が心の目だと見える気がしている。
実際は食後でお腹はぷりぷりなのだが。
寝て起きるとへっこんで、今度はほんとに筋肉がどこにあるのかわかる様相である。
おかしい。
目の前にいるのはボディービルダーではないはずである。
我が腹の方が、幼児のそれのようであるのは何故だらう。
齢二歳に負けるウン十年、重ねられたのはお肉だけ。
とはならないように気をつけようと思ふ。
……お肉とさもカッコ良いように、牛肉と同列のように語っていたが。
つまるところは脂肪である。
ただでも要らない脂である。
いっそ動力として燃えたらいいのにと思ふ。
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