第13話 生還

 一息つけたが、まだ八本歯のコルが残っていた。

 風は大丈夫だろうなとコルに着くと予想とは違って風は大分弱まっており、悪い核心部も上りだったため難なく抜けることができた。


 あとは強風でたびたび悪くなる視界に気をつけながら降りる尾根を間違えないように進んでミユの待つテントに着いた。


「ただいま」

 というとミユはテントから飛び出して俺に抱きついた。

 と言うのを期待していたのだがミユはテントの中でもぞもぞしていた。

「あれ? サトルどうなってる? あけてー」

「・・・」

 見るとテントのファスナーとフライシートがしっかりとかんでいて見える外からでも外すのに苦労した。

 現実は小説より奇なりミユはやってくれる。

 僕がいなかったらミユはどうしたのだろうと少し心配になった。

 下界の社会では出来る女らしいなのだが、山ではたびたび抜けているところを見せてくれる。

 まあ、そこがチャームポイントでもあると思うけど。

 きっと普段、忙しすぎるのが原因でもあるから、助けてくれる人がいれば良いんだろうけどなと。


「サトル、あのガスの中突っ込むからわたしどうしようかと」

「心配掛けました。稜線に上がってあと100mくらいのとこまで行きましたけど悪そうなので止めました」

「うん。それがいいよ。また来ればいいからね」


 さっさとテントを片付ける。

 先に降りたミユはテントを片付けているかと思っていたが、終わってみればミウの片付けを待っていた。

 現在12時半。

 18時か19時前には降りれるけど、なんとかあの山を明るいうちに抜けたいな。

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