第8話 設営

 15時。

 それぞれテントを張る。

 するとミウが

「サトル、私スノーフライ初めてで張り方がよくわからないんだけど」

 見ると布が三枚・・・

「レインフライも持ってきたの」

「お店の人が合わせて張った方が暖かいって」

「両方合わせて張るのは何かやり方を考えないとうまくいかないと思う」

「今回はスノーフライだけにしましょう」

 余計なレインフライを外して、スノーフライを張る。

 都市部にはなんだかわかっていない山道具屋の店員がいると聞いたことがあるがこれかなと。

 どういうやりとりがあったか知らないけど余計な提案をしてくれたなと。


 せっかくなので一緒にご飯を食べようとお湯を入れたアルファ化米のドライカレーを持ってミウのテントにお邪魔すると、まだ荷物の整理中だった。


 水が無いということで周りの雪を集めてバーナーで溶かす。

 ミユのガスは小さいガス缶ひとつ。

 1日分の水を作ったら終わりだなと・・・

 雪から水を作るのはけっこう燃料を使う。

 しょうがないので僕のお湯で溶かして燃料節約。

 僕はトレーニングもかねて水は明日帰るまでの2Lは持ってきていた。

 少なめだが冬だし、健康的にはあまり良くないのかも知れないがあまり水を飲まなくてもいられる。


 そして日が沈んで周囲の雪を集めて水を作るが、樹林帯なので割と雪にゴミが混ざってしまう。

 何でもやってみないとわからないなと。

 そんな中せっかく作ったお湯をミウがひっくり返してテントは水浸し。

 火傷しなかっただけ良かったか。

 ほんとやってみないとわからないなと。


「今日きつかった。私、もう一泊するかも」

「・・・水もガスもないから降りた方がいい」

 わかってないし、なめているのか。

 しかしそれは自分のことでもあった。


「降りるのどのくらいかかるかな」

「ここから6時間。山頂からだと8時間を考えておいた方がいいと思う」

「じゃあ明日は9時には降りないとね」

「うん。天気とか様子見て。明日遅くても5時半には登り始めましょう」

「了解。ところでサトル、ルートわかる」

「冬は見て行けるところいくしかない」

「夏道はダメだって」

「そうなんだ。行ってみてですね」

 ここでの何気ない会話をしっかり聞いておかないから大変なことになる。


 ここでの設営はテントを出て少し場所を動けば携帯の電波が入り、天気予報を見れたことも良かった。

 午前は良さそうだが、午後は悪るそうな天気予報。

 悪くなったら当分回復しないだろう。

 悪化が遅れてくれればいいが、まあ、今回は下見だと思って行けるとこまで行くか。


 自分のテントに入る。

 夜、風の音で眼が覚めたが樹がしっかり風を防いでくれている。

 良いところに建られた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る