向日葵のように
墨染 詩葉
第1話 序章
幼稚園の年長ぐらいだろうか。俺の両親は突如として俺の前から消え、行方不明になった。警察に届け出るという考えもなく、一人一面の向日葵畑の中で声を押し殺して泣きじゃくっていた時、同じぐらいの歳のとある少女に出会った。その少女は泣きじゃくる俺を見るなり、
「そんなに泣いても始まらないよ!」
こんな言葉を掛けられた。ガキの俺は、この少女が俺を慰めてくれると期待していたから、予想外の言葉に困惑したんだ。
その後彼女は続いて、
「立ち上がって前に進もう!歩き出そうよ!立ち上がれないのなら、私が手伝ってあげる!君はヒーローなんだよ」
その時、俺はヒーローという言葉の響きに魅了された。そうか、俺はヒーローなんだ。
それからというもの、俺は誰彼構わず助けた。重い荷物を持つ老婆を助けたり、犬に襲われた少女を助けたり…。
しかし、ヒーローというものは遅れてやって来る。事件が起こってから駆けつけて来るのだ。俺は目の前の事象を未然に防いでいる気だった。だが、それは全くの勘違いであった。
俺には家族さえも助けられなかったのだ。そして…そして…俺はヒーローとは程遠い気力も何も無い空っぽの青二才になってしまった。友達も無い。家族も無い。他人に興味が湧かない。没頭できる趣味も無い。ただのないない男の子。これからはそんな高校二年生の俺の、不思議な物語。
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