第23話 涙が涸れるまで
その後は公園にたくさんの大人が来た。
警察とか、近所の人とか、でもあまり詳しくは憶えていない。
大人達に事情を聞かれている最中に、タマちゃんのお父さんとお母さんがやってきた。
お父さんは見るからにカンカンに怒っていて、僕を見るなり怒鳴りつける。
「お前のせいかっ⁉ お前がやったのかっ!」
周りが止めなければ、間違いなく掴みかかってくる勢いだった。
僕は怒ったり、悲しんでいるタマちゃんの両親の姿を見て、初めてこれが僕だけの問題じゃないことなんだって思い知らされる。
「ごめんなさい……」
僕は両手を握りしめ、顔をくちゃくちゃにして、必死に声を絞り出した。
「ぼくのせいだ……ぼくが……タマちゃんに……」
僕があの時、上級生を止めたりしなかったら。
僕がこの公園に来たりなんてしなかったら。
僕がタマちゃんと特別な友達になって、こんな場所で一緒に空を見たりしなかったら。
「やっぱりお前が!」
僕の言葉を聞いたお父さんが僕を殴ろうと手を振り上げる。
別に僕は殴られてもよかった。
むしろその方が幾分か気持ちが楽になったかもしれない。
「子供相手ですよ! やめてください!」
だけど、タマちゃんのお母さんがそれを止めて、お父さんを諫いさめる。
そしてお母さんは眼の前で屈んで、僕の両肩を掴んで真摯に語り掛けてきた。
「あなたがマサくんね」
「ぼくの、なまえ?」
突然、自分の名前が出て驚く。
「たまきがね、いつもあなたのことを楽しそうに話していたの」
「ううっ……」
お母さんの優しい言葉で、ついに限界が来てしまった。
涙が
「でもっ、ぼく、なにもっ……なにも、できなくってっ……」
「ありがとう。たまきのために泣いてくれて。貴方は十分がんばったわ。何も悪い事なんてないのよ」
「でもっ……でもっ!」
どうしても納得できない僕を、お母さんはぎゅっと抱きしめて、やさしくあやすように言ったのだ。
「たまきと友達になってくれてありがとう。これからもたまきの友達でいてちょうだい」
「ううう……」
返事なんてとてもできなかった。
僕にそんな資格がまだあるのか、もう分からないのだ。
この時に一生分の涙を流して、僕の涙は枯れてしまったのかもしれない。
その後、僕はすっかり塞ぎこんでしまった。学校も休んで、ずっと部屋に閉じこもっていた。
母さんからは、タマちゃんの命に大事は無かったと聞かされた。だけど、しばらく入院して、それが終わったら転校することになったらしいとも。
母さんが言っていることが本当のことか確かめる手段は僕にはない。
だけど、もう二度と会えないことは確かなのだろうと何となく悟った。
でも、それもしょうがない。全部僕のせいなんだから。
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