第5話 カゲロウ救出
俺がゴルゴダ村の外で薬草回収していると、三人の美少女が必死に逃げてくる所だった。
「おい。どうしたんだ?」
「ひっ」
突然現れた俺に驚くが、正式な騎士の恰好をしている俺の姿に安堵したのか、彼女たちは縋りついてきた。
「お、お願いです。騎士様。助けてください」
「何があった」
俺が優しく聞いてやると、彼女たちは涙ながらにゴブリンの暴虐を訴えてきた。
「わ、私たちはもう冒険者なんてやめます。もともと格好いいから登録しただけで、本当は私たちってただの素人で、この恰好もコスプレなんです」
戦士たちは涙ながらに白状してきた。
「依頼を放棄するのは構わないが、あの忍者は?」
俺が聞くと、彼女たちはきまり悪そうに眼をそむけた。
「わ、わかりません。途中ではぐれてしまって……もししたらゴブリンに捕まってあんなことやこんなことされているかも……」
いまさらになって恐怖したのか、その場面を想像して真っ青に震えている。
「けしからん。まったくけしからん。ゴブリンごときが可愛い美少女にイタズラするとは。なんともったいない」
俺は憤慨し、彼女たちに誓った。
「待ってろ。俺が助けにいってやる。そうしたらあんなことやこんなことを……」
楽しい未来を想像しながら、俺はゴブリンの洞窟に向かった。
ゴブリンの洞窟前
「さて……やっぱり生身で侵入するのはリスクがあるな。仕方ない『霧化(ミストレージ)』」
俺は自分の体を霧に代えて、洞窟内に侵入する。
ゴブリンたちは霧と化して侵入した俺に気づくことなく、洞窟内をうろついている。俺は余裕をもって、洞窟内の構造を調べることができた。
「よし。逃走ルートはわかった。後は救出するだけだな。間に合えばいいが……」
俺は洞窟の最深部に潜る。そこは牢に通じる道らしく、見張り番のゴブリンたちがいた。
「よし、なら見張りを倒して……」
俺は門番をしている二匹のゴブリンたちの前で実体化する。
「ナ、ナンダオマエㇵ?」
「なんだお前はってか?そうです。余が変な王子さんです」
定番の答えを返しながら、俺は魔法を放つ。
「『ウインドスピア』」
「グガッ」
魔力で圧縮した空気の槍をゴブリンの目に打ち込むと、奴らはあっさり脳を貫かれて死んでいった。
「さて、助けに行こうか」
そう思った俺は、『物質転送(アポーツ)』」で鎧を引き寄せようと思ったが、この狭い通路ではごつい甲冑を着て動くのは不利たと気づく。
「仕方ない。これを使うか。俺は紳士だからな」
俺は『アポーツ』でマスクだけ取り寄せて顔を隠すと、
倒れたゴブリンの腰巻きをとって、身に着けた。
「ちょっと丈が足りなくて危ない感じだが、なんとかなるだろ」
丈が足りないので前を隠すだけで精いっぱいで、後ろは丸出しである。俺はあたりを警戒しながら、牢に向かって進んでいった。
洞窟の最深部
そこでは口元を頭巾で覆った美少女がシクシクと泣いていた。囚われになったかわいそうなボクである。
「ああ……ボクはこのままゴブリンにあんなことやこんなことされて、一生地上に出られないんだ。姫様にも会えない。誰かぁ。助けて」
ボクが絶望のあまり、泣きながらブツブツつぶやいていると、門番のゴブリンたちの悲鳴が聞こえてきた。
「グガッ」
続いて、誰かがやってくる気配がする。
「も、もしかして、誰か助けに来てくれたの?」
ピンチを助けてくれる白馬の王子様を期待してまっていると、やってきたのは腰巻姿に騎士のマスクだけかぶった変な男だった。
「ひっ!」
いきなり目の前に現れた変態を見て、ボクは卒倒しそうになる。
その変態は腰をフリフリさせながら、ボクに聞いてきた。
「ぐふふ。助けてほしいか?」
「えっ」
どうやら、こいつは人間らしい。変態だけど。
「ここにいたらゴブリンにあんなことやこんなことをされてしまうぞ。ぐふふ」
どうしょうか。裸で女を救出にくる男なんて、下心があるに決まっている。
でも、ここにいたらゴブリンにやられちゃうし……。
「……お、お願いします」
ボクは覚悟を決めて、助けをもとめるのだった。
「な、なんで君はそんな恰好しているんだよ!」
女忍者は抗議するが、これは仕方ない。『霧化』で霧になれるのは俺の肉体だけなので、魔法を使うとどうしてもすっぽんぽんになってしまうのである。
「気にするな。こちらにもいろいろ事情があるんだ。ええと……」
「ボクの名前はカゲロウ。とりあえず助けてくれてありがとう」
女忍者は礼儀正しく頭をさげてくる。
「俺はハンゲツ仮面だ。いくぞ」
俺はくるりと後ろを向いて、進んでいく。後ろからキャーという叫び声が響いてきた。
「お尻丸出し……ハンケツ仮面?それに、なんか金色の鱗みたいなのがついてるよ」
「うるさい。静かにしてくれ」
俺はカゲロウを黙らせると、通路の角にじっと身をひそめる。
そしてがプリンがやってきた瞬間、死角から飛び出して短剣を突き刺した。
「ゴブッ」
ゴブリンは何が起こったかわからないまま、血を吐いてしんでいく。
「……すごい。君ってもしかして暗殺者なの?」
カゲロウは感心しているが、実はこれは前世で見た劇の応用である。いきなり飛び出して扉で追い手の顔面を不意打ちするというのは、『彼』の持ちネタの一つだった。
それを応用すれば、相手の気配を探って出会い頭にナイフを突き立てることなど簡単にできるようになる。
知識は身を助けるというか、まさか異世界に転生してまで役に立つとは。ゴブリンたちを一匹ずつ不意打ちで殺し、俺たちは地上に近づいていった。
「あともうちょっとでここから出られるよ」
「ぐふふ。ここから出たら、何してもらおうかな」
俺の言葉に、カゲロウは警戒する顔になる。
「ちゃんとお礼はするよ。国からもらってきた活動費があるから、それを……」
「ぐふふ。俺は金には困ってないんだぁ」
意地悪くそういうと、カゲロウは困った顔になる。
「な、なら、どうすれば?」
「ぐふふ。体で払ってもらおうかなぁ」
カゲロウの反応を楽しみながら進んでいくと、出口が見えてきた。
「やった、これで助かった……」
「ニガサヌ」
突然、出口がピンク色の巨体でふさがれてしまう。ピンク色の肌をもったオークゴブリンが、横の通路から現れて通せんぼしてきた。
「そ、そんな。どうしよう。このままじゃまた捕まっちゃう」
オークゴブリンに出口をふさがれたカゲロウは、絶望のあまり涙を流す。
俺はそんな彼女を慰めるように、裸のまま抱きしめてポンポンと頭を叩いた。
「だいじょうぶだぁ」
「大丈夫じゃないよ!」
俺の腕の中で、カゲロウは切れてしまう。おかしいな。女って抱きしめて頭をナデナデしてやれば落ちるはずなんだけどな。
俺はカゲロウを後ろにかばって、オークゴブリンに対峙した。
「だめだよ。あいつの皮膚には短剣も魔法も効かない。それに、あいつには僕たちをとらえるための必殺技があって……」
カゲロウが何か言う前に、オークゴブリンは尻を向けてくる。
「ヒュプノスプレス」
オークゴブリンの大きく広がった尻穴から、激しい息が吹きかけられた。
「ひっ」
カゲロウが必死に鼻を押さえる。俺はまったく慌てずに、両手に風の魔力を集めて解放した。
「『風壁(エアシールド)』」
空気の壁が俺たちを包み、オークゴブリンの屁から俺たちを守る。
「す、すごい。でもどうしてこんな技を……」
後ろでカゲロウが感心しているが、屁などの下ネタ系ギャグは『彼』の十八番である。奴が尻を向けてきたときから次の攻撃は予測できていた。
「ブヒーーー!?」
俺たちが平然としているので、オークゴブリンは焦っている。
「今度はこっちの番だ。『風船の手(バルーンハンド)』」
俺は両手を前に突き出し、圧縮した空気の玉をオークゴブリンの口元に放った。
「ブヒっ?」
呼吸と共に空気の玉を吸い込んだオークゴブリンの腹がどんどん膨らんでいき、風船のようになってく。
「何しているの。その魔法は?」
「俺のオリジナル魔法さ。圧縮空気を相手の呼吸器を通じて体内に送り込み、体内で破裂させる技だ」
俺がそう言っている間にも、オークゴブリンはどんどん膨らんでいく。
「ブヒーーー!!」
とうとう、パーンという大きな音とともに破裂してしまった。
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