第83話
「キュイッ!」
キュイちゃんが胸を張ってどんっと手で胸を叩きました。
ああああ、白くて綺麗なワンピースに土汚れがぁぁ!
じゃなくて、そうだったんですね。キュイちゃんの大丈夫って言葉を疑ってしまって申し訳なかったです。むしろ、人よりも何でも食べられるんですね……。聞いておいてよかったです。これで安心です。
「大丈夫なら食べる?たくさん食べる物じゃないから1つだけね。ミック君も一つどうぞ。お口を開けてね」
二人とも手が土で汚れているので口を開けてもらってチョコレートを口に入れました。
うううううーーーん、お口を開けて待ってる姿もかわいいです。癖になりそうです。いけません。変な扉が開くところです。
ころりと口の中にチョコレートを入れます。
「!!」
「キュっ!」
二人の動きが止まりました。
目がらんらんと輝き始めます。
少しして、口がゆっくりと動き始めます。
あ、噛まずに舐めているのかな?飴のように口の中でチィロールチョコレートを転がしているようです。……とはいえ、飴ではないので、ちょっとしたらすぐに溶けてなくなっちゃいますけど。
……あれ?まだ動きません。
グルリンと、二人が顔を私に向けます。
「何だ、リツ兄ちゃんあれ、めちゃくちゃうめー。あれが泥団子なら、おいら、一生泥の中に埋もれて生活する。うますぎる、甘くて甘いだけじゃなくてびっくりするくらい、なんだ、あの泥団子っ!」
「キュイキュイ、キュキュキュイ、キュイキュイキュイキュイ、キュッキュッキュキュイーーーキュイ!」
う、うん、分かった。チョコレートが美味しいのは分かりました。
ええ、あれって、ちょっぴり麻薬みたいな依存性があるなんかがどうのとか言われているくらいですし……。
初めてチョコレート食べた反応としては……。なんていうか……。
二人ともかわいい!やばぁい!このかわいい反応が見たくてもっとチョコレート食べさせたくなっちゃうです!だめです!我慢です。
ううう。私はかわいいを我慢。ミック君とキュイちゃんは食べるのを我慢。3人とも我慢なのです。
「えーっとね、二人ともよく聞いて」
興奮気味に目をらんらんとさせながら早口でチョコレートのおいしさを伝える二人を落ち着かせるために、ゆっくりとした口調で話し始めます。
「お薬って分かる?かな?病気したときに治すために飲むやつ」
「おいら分かるよ。薬高いんだよな。一度だけ飲んだことあるよ。お腹が痛くなった時に、神官皇様が飲ませてくれた。お腹なんて寝てりゃ治るのに……薬、高いのに飲ませてくれた」
そっか。コウ様はいい人なんだね。
「キュイ、キュイ」
魔物はさすがに薬を知らないかなと思ったら、ミニ馬のキュイちゃんくらい賢いとどうやら知っていたようです。腕に何かぬりぬりする仕草をしています。
「うん、そうだね。怪我をしたときとかにお薬塗るね」
あてずっぽうでジェスチャーに反応すると、どうやらキュイちゃんの言いたいことが当たっていたようで頷いています。
「今食べたチョコレートは、昔はお薬だったのよ」
というのを文献で見ました。
……あれ?媚薬だったかな……。うん、あー……。
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