ゲーもの探訪
狐島本土
第1話 趣味がゲームの人
なにか新しいゲームをプレイしたい。
衝動的な欲望はいつも私を嘖んでいる。
それこそゲームをプレイしながらでさえ、新しいゲームのことを考えていたりする。もはや病気だとは言わない。病気の人に失礼だからだ。私は病気ではない。
趣味がゲームの人だ。
スプラトゥーンをプレイしながら「もっと自分が勝てるTPSゲームがあるのでは?」と思ったり、どうぶつの森をプレイしながら「もっと色々出来るスローライフゲームがあるのでは?」と思ったり、アサシンクリードをプレイしながら「もっと鮮やかな暗殺アクションができるゲームがあるのでは?」と思ったり、サイバーパンク2077をプレイしながら「もっと変な日本風の町並みを歩けるゲームがあるのでは?」と思ったりするのはまったく自然な思考のはずだ。
ゲーム中毒というようなものでもない。
二、三時間遊べば疲れて、こうして文章を書いたり、小説を読んだり、マンガを読んだり、アニメを見たり、気分転換をする。まったく中毒ではない。気分転換しながら攻略を考えていたりするが私は中毒ではない。
マップのあの辺りを探索してなかった。
ゲームはコスパの良い趣味だなどと言われることがあるが、私は同意しない。あらゆるジャンルのゲームを楽しめるストライクゾーンの広さとあらゆるゲームを遊びきれるプレイヤースキルがあれば別だが。そんなやつは桜井政博である。趣味がゲームの人ではない。さっさと任天堂に入ってスマブラディレクターの後継者に名乗りを挙げるべき人だ。
ゲームのコスパは悪い。
なぜなら好みのゲームを探して遊ぶ必要があるからだ。そして自分の好みのゲームがなんであるかは自分で探索しないとわからない。
あなたの好みのゲームは?
この質問にすんなりと答えられる人は幸せだ。そう言いたいがこれも言葉遊びに過ぎない。「マリオカートが好きです」「ふむ……8DXであと何年か頑張って下さい。9はきっと作られてると思うから」「マリオオデッセイが好きです」「ふむ……類似作品はあるけど、たぶん満足できないだろう。そろそろ3Dマリオの新作が欲しいけどどうだろうね」「ゼルダの伝説ブレスオブザワイルドが好きです」「ふむ……五年待ったけどやっと今年続編が出る。だがたぶんその次は五年以上待つだろうね。続編が傑作だといいね」メジャータイトルが常に最高傑作、そんな例がゲーム業界には多すぎる。好みのゲームが任天堂だと、代わりになるゲームが常にない。
任天堂が強すぎる。
他のメーカー作品が好みのゲームだったとしても実際は同じことだ。任天堂ならばまだ続編への希望を持てるだけマシというぐらいで、続編が出ないだけならまだしも、主要スタッフが抜けたり、スタジオが解散したり、会社ごと買収されたり、倒産したり、娯楽業界のご多分に漏れず浮き沈みの激しいことに絶望することだろう。
探さなければ見つからない。
それがコスパの悪さの根本だ。思い出はいつも綺麗だけど、それだけじゃお腹が空くと昔の歌も言っていた。私は任天堂という思い出を胸に、それだけじゃ満たされない欲望に彷徨っている。
このエッセイはそんな探索の記録になる。
決して、小説の中でゲームのネタを盛り込みたいけどそれをやるとキャラクターの設定が狭まるので断念してて書きたいことが書けなくてストレスが溜まっているから吐き出しているとかではない。断じてない。
私は趣味がゲームの人だ。
2023年1月25日 狐島本土
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