婚約者とのお茶会が憂鬱でならない

 ティーカップを口に寄せ、紅茶を一口。最近流行りの甘やかな香りが鼻腔を抜けた。


「……」


 天気が良いから、と珍しく外でお茶を嗜むことになった。婚約者と二人、回りの景色は違えど、無言なのはいつもと同じ。

 木の葉の間から注ぐ日の光に照らされて、彼の金の髪が輝く。その目は私を見ているような、違うような。


「……」

「……」


 無言。無言でしか場を繋げない。私は殆ど、この婚約者と喋ったことがない。

 彼が寡黙なのでもなく、私だってだんまりが常な訳ではない。寧ろ私は、普段は良く喋る方だ。なぜかこの場面にいたると、二人とも口を噤んでしまうだけで。


「……」


 無意識に落ちた視線が、カップの中の赤茶色を捉えた。紅茶に映った私は、私を見つめ返す。

 今の流行だからと侍女が気合いを入れて巻いた髪は、ボンネットからふわりとこぼれ落ちている。化粧を施した顔は、色はついていても、華やかさには欠ける。

 そう、目の前の婚約者様の前では、霞むほどに。

 ああ、私は。

 苦手としているのだ、この人を。

 この人と比べてしまう、自分自身を。

 家柄も、見た目も。何もかもが格が違う彼と、どう接するのが正解なのか分からない。

 初めて会った時から、その静謐な佇まいと声とに意識を奪われ、瞬きの間に私の心に一点の染みが出来た。それはじわりじわりと大きくなる。今も、多分、これからも。


「──」


 呼吸と同量の溜め息を落とせば、ちらりと視線が寄越された。

 そんなに分かりやすかったろうか。それとも彼が鋭いのだろうか。……どちらも正解かも知れない。


「……」

「……」


 無言のお茶会は、距離を置いて立つ執事が声を掛けるまで続くだろう。



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