落書き置き場

山法師

愛って素晴らしいね

 何かを愛そうと思った。


 そう思い立った理由は特にないけれど、強いて言うならその時とてもとても暇で、何か大袈裟に大それた暇潰しをしようと思ったのだと、今なら思う。

 特に後悔はしていない。

 そのおかげで今、満ち足りているから。



 人を愛した事はなかったので、それは早々に諦めた。

 そして次に思いついたのは机に乗ったカップだった。

 これなら、結構長い付き合いだし、そもそもとして気に入っているし、愛する事ができそうだと思った。

 手に取ってみる。うん、いい感じ。そんな風に眺めていたら、なんという悲劇だろう──そのカップを落としてしまったのだ。しかも原形を留めないほどに粉々に砕けて。

 とても落ち込んだ。だって、愛そうとしたのに。愛せそうだと思った途端それは消え去ってしまった。

 ああ、どうしよう? 何を愛せばいいのだろう?

 絶望に苛まれていた時に、ふと、さっきも目に入ったものが再び意識に入り込んできた。

 机。

 愛そうと思っていた、あのカップが乗っていた机。

 そうだ。この机も。これも自分のお気に入りだ。あのカップより、長く、より深く。

 愛を失ったばかりで気落ちしていた心に、その想いは簡単に芽生えた。

 そして、美しく咲き誇った。


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