第359話 従魔を求める
Side ???
日本の北海道や秋田にダンジョンが開放されてから十日ほどたったある日、九州ダンジョンパークにある従魔の町に大勢の人が来ていた。
何かイベントがあるわけでもなく、お祭りが開かれているわけでもないのに、だ。
テイムギルドで、職員として働いていた大内誠二はその光景を不思議に思いながらいると、受付嬢からヘルプを頼まれる。
「誠二君、依頼受付をお願い!
手が足りないのよ!」
「わ、分かりました!」
自分の仕事の書類整理を中止して、すぐに依頼受付のカウンターに入る。
すると、何人もの人が並んでいることに今さらながら気づいた。
「い、いらっしゃいませ! テイムギルドへようこそ!
ご依頼ですか?」
「ああ、依頼をお願いしたい」
「畏まりました。
……では、こちらに必要事項をご記入ください」
そう言って、カウンターの下から依頼出願書とボールペンを相手に出す。
すると、すぐに依頼を出しに来た男性は記入し始める。
「……」
記入している内容を覗くと、どうやらテイムの手伝い依頼のようだ。
でも、この依頼はテイム用ダンジョンに潜る時に出されることが多い。
「これでいいか?」
「……はい、確認しました。
ではこちら、掲示板にすぐに貼らせてもらいますね」
「どれくらいで受けてもらえるか分かる?」
「えっと~……」
少し困った表情で、隣の本来の受付嬢をしているアニーの方を見ると、指を三本出して見せてくれる。
なるほど、三日という意味か。
「今だと、三日ほどかかるとのことです」
「ん~、こんなに混んでたらしょうがないか……。
分かった、ありがとう」
「ありがとうございました~。
次の方どうぞ~」
次々と人が来て、テイム補助の依頼を出していく。
並んでいたすべての人の依頼を受け付け終わったのは、俺がヘルプに入ってから二時間後のことだった。
疲れた体で休憩室に入ると、他の依頼受付をしていた受付嬢たちが疲れた表情で休憩していた。
「ハァ~、疲れたぁ~」
「今日も、テイム依頼がほとんどだったわね……」
「最近多くないですか? テイム依頼」
俺は、コーヒーの缶を持って椅子に座りながら声をかける。
すると、先に休憩していた受付嬢たちが答えてくれた。
「誠二君は、今日からだっけ?」
「はい、今日からこのギルドで働くことになったんですけど……」
「それで、受け答えが研修通りだったんだ」
「はい。で、テイム依頼が多いのは……」
「北海道と秋田に、ダンジョンができたせいよ」
「北海道と秋田のダンジョンですか?」
北海道と秋田のダンジョンが、テイム依頼に何の関係が……。
俺が不思議に思っていると、もう一人の受付嬢が答えてくれる。
「その二つのダンジョンの探索に、テイムした魔物を使おうとしているんだよ」
「え?! できるんですか?」
「ん? どういう意味?」
「いや、ダンジョンパークでテイムされた従魔は、ダンジョンパークから持ち出せないって聞きましたけど……」
「……それが、持ち出し許可が下りたのよ」
「それで、こんなにテイム依頼が……」
ダンジョンパークでテイムした従魔を使って、ダンジョン探索の戦力としようというわけか。
しかも、ダンジョンパークからの持ち出しが許されたということは、今までパークから出すことができなかった従魔もパークの外に持ち出せるというわけか……。
……これは今、ダンジョンパークの外は大変なことになっているんじゃ……。
「あの、ダンジョンパークの外は大丈夫なんですかね?」
「……ああ~、従魔たちが外の世界をってこと?
大丈夫よ。ダンジョンパークの従魔を外に出すときは制限をかけているらしいから」
「制限?」
「ペットでもあるでしょ?
ケージに入れて持ち運ぶ、みたいな。
あれと一緒で、ダンジョンパークとダンジョン以外で外に出せないようにする魔道具があるそうよ」
「それのおかげで、パニックは起こってないわ」
「そ、そうですか……」
なるほど、持ち運び用の魔道具があるのか。
例の、〇ンスターボー〇のような物があるのかな?
持ち運びに便利な……。
そんなふうに納得していると、休憩室に人が入ってきた。
ギルド職員の女性だ。
「あなたたち、休憩時間過ぎているわよ?!
早く持ち場に戻りなさい!」
「「「は~い」」」
どうやら、話し込んでいるうちに休憩時間が終わってしまったようだ。
さて、受付の方は終わったから本来の仕事に戻ろうかな。
頼まれた書類仕事、まだ終わってないんだよな……。
▽ ▽ ▽
Side ???
テイム依頼を出したが、受けてもらえるまで三日はかかるらしい。
秋田ダンジョンの二階層で躓いたため、SNSの掲示板で情報を集めて、九州ダンジョンパークで魔物を従魔にすると探索の手助けになるとか。
依頼料はかかるが、探索が進められるとあればおしくはない。
秋田ダンジョンのある階層には、金が採れる場所があるらしい。
俺のような探索者は、まずそこを目指して金を採掘するのが定番になっている。
ただ、金の採れる階層まで行くのが大変なのだが……。
まあ、それでパーティーを組む者もいるが、報酬の分配で必ずもめるらしい。
そんな揉めるぐらいなら、ソロで挑もうと挑戦してみたが、二階層で躓いてしまった。
ダンジョンの魔物って、結構強いんだよな……。
俺は、九州ダンジョンパークの町で依頼を受けてくれる人たちが現れるまで、宿で待機の日々が始まった……。
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