第327話 星が落ちて



Side ???


クリスマスイブになったばかりの深夜三時、高知県から南に少し行った沖合に星が一つ着水した。

それは、かなりの大音量で着弾し高知に住む人々も地震かと思えるような揺れを感じたそうだ。


朝、日が昇って沖合を確認すると、海底火山が噴火したかのような煙が海面から立ち昇っていた……。



桂浜などに集まる人々。

昨日の、隕石の影響で立ち昇る煙を確認しようと、野次馬や役所の人が集まっていた。

その中に、二人の場違いな女性が二人いた。


フードを目深にかぶり、顔が確認できないようにしている女性二人は、星降りの件を知っているかのような会話だった。


「星落としの魔法が使えるとは、思わなかったわ……」

「どうやら、あのスクロールは本物ってわけね」

「それで、例の悪魔への対処は全面対決でいいの?」


右にいる女性が、左にいる女性の方を向く。

そして、一本のスクロールを差し出した。


「ええ、あの悪魔は必ず倒さないといけない……」

「そんなに、責任を感じることはないんだよ?」


左の女性は、差し出されたスクロールを受け取りながら言った。

そのフードで隠れているとはいえ、言葉から表情を読み取り右側の女性は、慰めの言葉をかけた。


すると、左の女性はフード越しに顔を左右に振る。


「私が召喚してしまった悪魔だもの。

責任は、私にあるわ……」

「……でも、幸次君が亡くなったのは……」

「それでもよ。

それに、幸次の命を奪ったあの悪魔を私自身が許せないわ!」

「めぐみ……」

「佐那ちゃん。

私と同じダンジョンマスターだからって、責任感じなくても……」

「ううん、私も天使を呼び出した責任があるもの。

でも、私の呼び出した上位天使ロセリオは、この間出ていったきり帰ってこないのよね……」


右側の女性の佐那は、空を見ながら黄昏る。

佐那の召喚した上位天使は、佐那と一緒に歩いていた所、何かを感じ取り急に飛び立っていった。

そして、例のクリスマス島の対決の場所にいて、天界の門に封印されていた。


また、めぐみの召喚した悪魔は、めぐみを庇った幼馴染の幸次を殺して力をつけ、どこかに行ってしまったらしい。

そして、ようやく悪魔の居場所を見つけ幸次の仇をとろうと画策している。


その会話らしい……。




▽    ▽    ▽




Side 五十嵐颯太


二人の女性の会話を、コアルームの空中に浮かぶモニターで確認していたが、何やら物騒な内容だ。


「夜中のメテオ騒ぎを調べていたら、こんな状況とは……」

「それにしても、また悪魔と天使関連ですか……」


俺が頭を抱えていると、横にいたミアが呆れていた。

ダンジョンマスター騒ぎから、今や悪魔と天使を召喚した奴らの尻拭いをしている始末だ。


二人の女性の会話の内容に、その背景を調べれば悪魔と天使案件だった。


「マスター、どうしますか?

悪魔の居場所次第では、町中でメテオを使われかねませんが……」

「まさか……。

いくらなんでも、町中で隕石落としはしないでしょ?

……え、マジ?」

「復讐達成の前では、他人を巻き込むことなど些細なことになるのでは?」

「いやいや、人の倫理観はちゃんとしているはず……だ……と思う……」


ミアの真剣な表情に、俺は自信が無くなってきた。

もしかしたらこの女性たちは、本気で町中でメテオを使いそうな気がしてきたからだが……。


「と、とにかく、その仇の悪魔の居場所は分かっているか?」

「はい、見つけました」


ミアはそう言うと、もう一つのモニターに悪魔を映しだす。

そこには、三人の裸の男たちの上で寝ている、これまた裸の悪魔の女がいた。

よくよく見れば、三人の男たちは死んでいるようで、顔色が良くない……。


「何これ……」

「事後のようですね。

で、最後に男たちを殺して自身の力として、安心して寝ているのでしょう……」


俺は、再び頭を抱えてしまう。

また、悪魔による犠牲者が出てしまった。

黒い髪に、黒い羊のような角が見えている。


顔は美人で、スタイルもいい。

淫魔のようなテクニックで、男たちを何度も昇天させたのだろう。

ホテルの一室のようだが、乱れに乱れて汚れまくっている。


これは、清掃が大変だな……。


『マスター、こいつ、魔界の門に封印します?』

「ん~、どうするかな~」


大天使ガブリエルが、モニターを覗き込んで悪魔の姿を確認すると封印するかどうか聞いてきた。

封印するのもいいが、今回は復讐を遂げるまであの女性二人は諦めないだろう。


ここは、復讐させて悪魔を倒すか、復讐の際に殺したと見せかけて封印するか……。

俺は、悪魔の寝ている映像を見ながら考えていた。


すると、悪魔が起き上がりこちらを見た……。




▽    ▽    ▽




Side ???


さっきから、うちの安眠を妨害しているアレは何だ?

蟲のようだが、蟲の持つ魔力ではない。


さっき殺した男たちの死体の上で起き上がると、蟲の方を見る。

じっと見ると、それがゴーレムであることが分かった。


『虫のゴーレム?

こんなん使うやつといったら、ダンジョンマスターぐらいやろ?』


魔法で、どろどろになった自分の体をきれいにして服を身につける。

そして、虫ゴーレムを操っている魔力の糸をたどろうと索敵を行う……。


すると、北にある山の中に繋がっていた。

罠の可能性もあるけど、今のうちの強さなら大抵の敵は対処できる。

そう考え、魔力の糸をたどるためにホテルの窓から飛び出した……。






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