第188話 テイムへの道
Side 五十嵐颯太
「お待たせー」
佐々原、長田、星野の登録が終わり、無事カードを作成してきた。
「それじゃあ、まずは入るぞ」
「ここに、カードをかざすんだよ。
駅の改札と同じような感じだから、大丈夫だよね」
「ええ、大丈夫」
俺と凛が入り口ゲートを通過した後、佐々原、長田、星野の順でゲートを通過した。
これで、次はテイムできる従魔の町を目指すんだけど、その前に始めの町へ行かないといけない。
最初のダンジョンパークの最初の町から、九州ダンジョンパークの始めの町へ行くには、時間がかかりすぎるため、ここはダンジョンマスター権限で裏技を使用する。
「さて、これからテイムできる町、従魔の町へ向かうわけだけど、普通にここから行くには時間がかかりすぎるので、裏技を使います」
「裏技? というか、時間がかかるってどのくらい?」
「今、みんなの目の前にある町は、ダンジョンパークに来て最初に訪れる町の最初の町だ。
この町から北へ行った、中央の町へ行きます。
そこから、西へ進み九州ダンジョンパークの始めの町へ行く。
さらにその初めの町から北へ行くと、目的地の従魔の町となります」
「……かなりの行程ね。
それで、何時間ぐらいかかるの?」
「全工程を合計すると、早くて七日かかる計算です」
「七日?! ここってそんなに広大なの?」
「北海道が、まるっと入るほど広大です」
「「「……」」」
佐々原たち三人とも、絶句しているな。
このダンジョンパークが、そんなに広大だったなんて思わなかったんだろうな……。
まあ、ここに来園している人たちも、ダンジョンパークの大きさというのは自覚してないだろう。
せいぜい、東京ドーム何個分とかいう感じだろうな……。
ダンジョンパークは、全十階層。
九州ダンジョンパークと合わせて、二十階層だ。
つまり、北海道、二十個分ということになる。
……広すぎかな?
「そ、それで颯太、裏技って何?」
絶句している三人に変わって、凛が質問してきた。
凛は、ある程度知っているから驚かないよな。
俺は、地面を靴で何度か叩き、扉を召喚した。
地面に魔法陣が表れ、赤い扉が出現した……。
「それは、この転移扉です。
この扉を潜れば、従魔の町の手前に着くことになります」
「そんな便利なものがあるんだ……」
「それって、どこでも〇アじゃないの?」
「似たような物かな、ダンジョンパーク限定になるけど……。
とにかく、さっさと行かないとテイムする時間が無くなるよ?」
「そ、そうよ! 私たちの、当初の目的を忘れてはいけないわ!
行くよ! みんな!」
「「「はい!」」」
佐々原が、リーダーになってみんなを導いている。
この四人がそろうと、なぜか佐々原がリーダーになるんだよな……。
学校でもそうだったし。
気合を入れて、俺が作り出した扉を潜って行く四人。
目を瞑って、潜る人がいるけど危ないよ?
四人が潜ると、最後に俺も扉を潜った……。
▽ ▽ ▽
Side 五十嵐颯太
扉を潜った先は、従魔の町。
ここでまず、テイムについて知り、テイムスキルを貰うのだ。
「目の前に見える町が、従魔の町だ。
ほら、あそこに従魔を連れた人たちがいるだろ?」
「あ、あれが従魔なのね」
「あの人たちが連れている従魔って、何?」
星野が、質問してくる。
従魔の町の入り口で、話をしている三人。
その人たちが連れている、従魔が気になるようだ。
「三人とも同じ従魔だよ。
名前はウィンドイーグル、風の鷹だったかな?
上空からの攻撃や、偵察に使える従魔だな」
「へぇ~」
「普通は、戦いや依頼なんかの補助的な目的でテイムする人が多いね。
ペット目的もいないわけじゃないけど、パートナーとして扱う人が多いよ」
「私たちは、もちろんパートナーだよ。
テイムしたら、モフモフを堪能するのだ~」
「うんうん」
俺は、あえてツッコまないで、従魔の町のテイムギルドへ向かった。
町に入り、すぐ左手に見える建物がテイムギルドだ。
「あそこがテイムギルドだ。
あそこで、テイムに関する講習を受けて、テイムスキルを貰うんだ。
それで、テイムできるようになる。
俺は、この辺りで待っているから四人で行ってくるといいよ」
「分かった」
「行ってくるね、颯太」
四人は、連れ立ってテイムギルドへ向かった。
さて、四人がテイムスキルをえるまで一時間くらいかかるかな。
その間は、町の様子でも見て回るか……。
この従魔の町は、テイムするための中心地として造ったんだけど、いろんな人が来ているな……。
テイム補助のための冒険者や、テイムを終えて従魔を連れた日本人たち。
さらに、その従魔と一緒に食事をとる人など、いろいろだ。
ペットとして扱う人や、従魔に話しかけている人もいる。
まあ、人の言葉を理解する従魔もいるはずだから、間違ってはいないんだけどね。
従魔の町にある、数件のコンビニの一軒の側を通ると見知った人を見つけた。
「お~い、颯太~」
「え、颯太が来ているのか?」
「あ、ホントだ。颯太だ」
陸斗、悟、恭太郎の三人だ。
それに、側でアイスクリームを食べている狐っ子の三人もいた。
どうやら、町に来て早速強請られたらしい。
「よう! 陸斗たちがこの町に来ていたとは、思わなかったよ」
「何言ってんだよ、ここにはコンビニがあるからな。
アニュスたちに、まずはコンビニスイーツを味あわせたくて来たんだ」
「へぇ~」
「陸斗、この男が陸斗の友達か?」
「ああ、颯太っていう俺の親友だ。
挨拶、挨拶」
「うむ、わらわはアニュスという。よろしく頼むぞ」
「よろしく、アニュス。五十嵐颯太です」
「私は、イニスです」
「私は、レニュスだよ。よろしくね」
「こちらこそ、よろしく」
それぞれの狐っ子と握手を交わしていった。
この狐っ子たちは、俺がこのダンジョンのマスターであることは知らないんだろうな。
ただ、玉藻なら知っていると思うが、わざわざ挨拶に行く必要もないか……。
「ところで、颯太はどうしてここに?」
「佐々原たちのテイム支援に、駆り出されたんだ」
「ええ、それは災難だな……」
「お前らが、佐々原たちに自慢したんだろ?
そのせいで、私たちも手伝いなさいって強引に連れ出されたんだよ」
「ああ~、それは申し訳ないことをしたな~」
「全然、申し訳ないと思ってないだろ……」
「まあ、頑張れ」
陸斗に肩を叩かれ、励まされた……。
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