「切り裂きジャック・百年の孤独」島田荘司

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「 犯罪史上、一八八八年の切り裂きジャックの事件ほど、陰惨で血腥いものはほかにない。しかしこの事件は、ミステリーを愛する者にとっては、特別味わい深いものである。

 その意味で、シャーロック・ホームズ冒険譚とよく似ている。いかに血と悲劇を扱った物語であろうとも、今のわれわれが手にとり、読めば、郷愁にも似た得がたい味わいが、行間からたちのぼるのを誰もが感じる。これは何とも不思議な喜びというほかはなく、それはちょうど世界一苦い酒が、百年の時を経て、最も豊潤な甘みを得た様子にも似ている。」


出典:『 切り裂きジャック・百年の孤独 』島田荘司 より

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 19世紀末のロンドンで起こった「切り裂きジャック」事件は、その正体について現在まで繰り返し論議されるも、犯人は不明のままです。

 そして、色々な作家がこの謎と犯人についての作品やジャックをモチーフにした作品を書いています。


 島田荘司さんのこの作品も、ジャックをモチーフにして書かれた作品の一つです。


 ****** 1888年ロンドンを震撼させた凶行から百年後の1988年ベルリン。 まるで切り裂きジャックが甦ったような陰惨な連続娼婦殺人事件が起こる。 1888年ロンドンと1988年ベルリンの事件が交互に描かれるスリリングなストーリー展開。 百年の時を隔てた二つの事件の真相が完全解明される?!


 思いもよらない意外な犯人には驚かされましたが、読み返してみると確かに伏線は張られているんですよね。

 切り裂きの動機も含めて、今までになかった解釈にも妙に説得力を感じます。

 1888年の霧深いロンドンと1988年(現在)のベルリンを行き来しながら夢中で一気読みしました。 探偵役である「切り裂きジャック研究会」名誉顧問のクリーン・ミステリ氏(!)には思わずニヤリ!

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