12. 聞き分けのない
12. 聞き分けのない
オレとジェシカさんはルークという少年と共にギルドに入り、リリスさんに紹介をする。
「あら?可愛いお客さんですね。ようこそ。ギルド『フェアリーテイル』へ。私はギルド受付嬢のリリスです。よろしくお願いします。早速ですが、冒険者登録をしましょうか。こちらにどうぞ」
「はい!」
元気よく返事をして、カウンターに向かうルーク。その様子を見ると、本当に冒険者になりたかったんだと分かる。オレはそんなことを考えながら見守ると、リリスさんは笑顔で対応していた。
「では、まずはこの用紙に名前を書いてください」
「はいっ!分かりました」
そう言って紙に記入していく。どうやら字は書けるようだ。
「書けました!」
「えーっと……。ルークさんでよろしいでしょうか?」
「はい!合っています!」
「ひとつ聞いてもいいですか?君はなぜ冒険者になりたいのですか?それに親御さんの許可はあるんですか?」
リリスさんがそういうとルークは黙り込む。やはりそこが問題だろう。子供だけで危険な依頼もこなせるわけがない。それに彼は孤児なのかもしれない。だとしたらなおさらだ。
「えっ……えーと……」
「答えられないなら結構ですよ」
「いえっ!あります!ちゃんと許可もらってきました!」
「嘘は嫌いです。正直に話してください。でないと冒険者にはなれませんよ?」
するとルークはうつむいて、震えだす。
「ごめんなさい……。やっぱり無理です……。帰らせてもらいます……」
そう言って泣きながら走り去ろうとするルーク。だがそれをオレが止める。
「待てよ。君がどんな気持ちでここに来たのかは知らないけど、諦めるには早いだろ?」
「で……でも……」
「いいから、オレたちに話してくれないか?」
「うん……分かった」
それからルークはゆっくりと事情を話し始めた。
「実はお母さんが具合が悪いんだ。その薬を買うお金が必要で……。だから冒険者になればお金がたくさん手に入ると思って……。」
なるほどな。つまりルークは冒険者として依頼をこなせば、報酬としてお金が入ると思っているらしい。しかし、現実は甘くはない。命を落とす危険だってあるのだ。それを考えているとリリスさんが話す。
「理由は分かりました。でも、それだけじゃダメ。そもそも君には戦う力があるの?武器はある?魔法は?仲間はいるの?」
「そっそれは……」
「何もないなら、冒険者は務まりません」
厳しい言葉をかけるリリスさんだったが、オレも彼女の意見に賛成だ。さすがにこのままでは彼には荷が重すぎる。
「確かに……そうかもしれません……でも!それでも……ボクは……お母さんの為に薬を……」
ルークは必死に訴える。それを聞いたリリスさんは立ち上がりクエストボードから一枚の依頼書をはがす。
「はぁ……聞き分けのない子ですね。まぁいいです。ジェシカちゃん。この依頼を受けるので手続きをお願いします」
「え?あっはい」
「あの……リリスさん?」
「私はまだ冒険証を持っていますから問題ありませんよね?この子と共に依頼をやります。この子の面倒はエミルくんに任せますね。一緒についてきてください。ジェシカちゃんはお留守番お願いします」
「えっ!?ちょっちょっと!?何勝手に決めてるんですかリリスさん!?」
「あのですね?そもそもこの子をこの『フェアリーテイル』に連れてきたのはエミルくんですよ?責任持って面倒を見るべきです。エミルくんに言っても仕方ないかもしれませんが、責任感のない男は嫌われますよ?本当に良いところないですねエミルくんは」
うぐっ……。痛いところを突かれた。たしかにルークを連れてきたのはオレだし、こうなった以上オレにも責任はある。それに……。
「わ……わかりました……オレも行きます。それで……オレは何をすれば?」
「はい。ではついて来てください。行きますよ」
そう言ってルークの腕を引っ張りリリスさんはギルドの外に出ていく。するとジェシカさんがオレに声をかける。
「マスター。リリスさんには考えがあるのかも。2人のことお願い」
「ああ。分かったよ」
オレはそのまま2人のあとを追うようにギルドから出ていく。受けた依頼は近郊の森のスライム討伐か。大きな問題はなさそうだけど、一応気をつけておこう。
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