18話

「僕、実は幽霊が見えるんだ」

 いきなりのカミングアウトだ。

 明日が終業式という日の帰り道、烏丸が突然、言った。

「はあ、いきなり何だよ?」

「だから、僕、実は幽霊が見えるんだよ」

「幽霊が……、見えるう?」

「君たちは恋愛相談よりも、本当は心霊相談を求めてるんだよね? だったら、僕が力になれると思うんだ。……僕を救ってくれた恩返しのつもりなんだけどな。ダメかな、白鳥さん?」

 白鳥を懇願の眼差しで見詰める烏丸。 

「……本当に見えるのね?」

 念押しだ。

「うん。今まで、誰にも言えなかったんだけどね。君たちに秘密は無しかなと思って」

 あの秘密に比べれば、軽いもんだしな。

「……分かったわ、烏丸君。心霊相談の時は宜しくね」

 恋愛相談も手伝うのは無理だ。

 だって、本人目の前だしということになる。

「僕も、白鳥さんの下僕ってことでいいよ」

「えっ、いいのかよ⁉」

 烏丸、もしかしてドMなんじゃねえの?

「あなたを下僕に使うなんて出来ないわ。立場的には、私の同僚で良いわ」

 おれは平気で扱き使えるのか。

「わー、ありがとう、白鳥さん」

 烏丸は少し大げさに喜んだ。

「で、幽霊が見えるというあなたから見て、近場の心霊スポットは何処かしら?」

 少し考えてから、烏丸は言う。

「駅前から少し離れた、人通りのほとんどない所にある廃病院なんてどうかな?」

「目の付け所がいいわね、烏丸君。私もいつかまた調査に行こうと思っていたのよ。……そうだ、早速、今日行きましょう」

「今日? いきなり過ぎだろ。明日も学校あるし」

 昨日はホストクラブ潜入で、ほぼ徹夜だったから、今日はゆっくり寝ようと思っていたのに。

「なんとなく行きたい気分なのよ。それに、どうせ明日は終業式と掃除くらいしかないわよ」

「あと、通知表も返って来るね」

 烏丸が嫌なことを思い出させる。

「どうせ、お前はオール5だろ」

「さあ、どうだろうね」

 余裕の笑みだ。

「そういえば、烏丸君。あなた、夜はホストクラブで働いていたのに、よく勉強する時間が取れたわね。特別な記憶術でも使っていたのかしら?」

「そういやそうだ。どんな勉強法をしているんだ?」

「特に何もしていないよ。宿題だけはやったけど」

「予習は?」

「予習なんかしなくても、ほとんど答えられるから。僕、物覚えはいいから、特に勉強しなくてもテストはそれなりに取れるみたいなんだ」

「くそっ、超天才型め。おれなんか、勉強しても点取れねえんだぞ!」

 こんな奴が学年トップクラスかよ。

 白鳥も、烏丸の「僕、勉強してないよ」発言にショックを受けたのだろう。

 白鳥も勉強しなくてもそこそこ点が取れる天才型なのだが、さすがにテスト週間には勉強していた。

 同じ天才型でも、烏丸の方が格上ということだ。


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