16話

「それでですねー、ウチのお嬢様と来たら、内気過ぎて、知らない男性に顔を見られるのも恥ずかしがるんですよ。平安時代の貴族かって話ですよねー。私、お嬢様を生まれた頃からお世話しておりましてー、お嬢様の言いたいことなら、何でも分かるのですよー。……あっ、今、お嬢様が少し一人になりたいと仰っているので、すいませんが、お席を外して頂けます?」

 ……よくもまあ、嘘のセリフが出て来るものだ。

 ある意味、尊敬するぜ。

 ホストたちが離れた。

 白鳥とおれが内緒話をするように、顔を近付ける。

 聞かれたら、マズいので超小声だ。

「それで、彼は見付かりましたか?」

 ここでも、お嬢様口調だ。徹底している。

 彼とは、もちろん烏丸のことだ。

「はい、あちらにおられます」

 金髪で、かなりのイケメンであった。

「あの、金髪ですが、本当に彼なのですか?」

「ええ、間違いありません。金髪はカツラでしょう。……それに、あの笑い方と、腰の形は彼ですよ」

 腰の形って……。

 お前、烏丸をどんな目で見てんだ。

 でも、確かに、烏丸だと言われればそうだ。

 そして、白鳥はスマホを動画モードにして、証拠写真を撮る。

 スマホの動画モードは、音がしないのだ。

 盗撮犯の手口である。警察密着二十四時で見た。

 証拠写真を撮った白鳥は、烏丸の前へ歩み寄り、白鳥美和子の普段の声で、こう言った。

「こんばんは、烏丸君。こんな所で何をしているのかしら?」

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