10話

二日後、白鳥の家。

 両親が他界し、一人暮らしの白鳥のために、おれは晩飯を作ってやっているのだ。

 料理は得意だから、別にどうってことはない。

 ちなみに、今日は肉じゃがだ。

「そういえばさ、烏丸も一人暮らしなんだってな」

 おれは、ジャガイモを切りながら、今日の聞き込みの報告をする。

「それで?」

「烏丸と同じ中学だったって奴から聞いたんだけどな。一人暮らしっていっても、親が仕事で全然家に帰って来ないってだけらしいけどな」

 おれの所は、夜には帰って来るけど。

「烏丸が通ってた中学は、ここからかなり遠くて、桜木高に入ったのも、烏丸とそいつだけだって。でも、烏丸の成績なら、ここよりもレベル高いとこ十分に狙えたはずなのにとも言ってた」

 おれ達の高校は、県内で中の上ってところだ。

「しかも、烏丸は中二の時に県外に引っ越したんだとよ。夏休みの間に、突然引っ越してたもんだから、学年中が驚いたって」

「では、県外受験ってこと?」

「そうなるな。戻って来たのは、高一の春らしいからな」

 わざわざ、県外受験する程の魅力がウチの学校にあるのかは疑問。

「中学時代の烏丸君の様子は?」

「ああ、今と変わらず、モテモテだったって。成績優秀、スポーツ万能で、完璧な奴だった。……今も、そうだな」

 きっと、烏丸はずっと完璧だったのだろう。

「ねえ、烏丸君に特定の友人、親友みたいな人はいないわよね」

「……確かにいないよな。誰とでも仲良くしてるし」

 おれが話を聞いた奴も、烏丸と特別仲が良かったわけではない。

「広く、浅く、誰とでも仲良く、ね」

 白鳥が独り言のように呟いた。

「そういえば、お前の方はどうなってんだ、準備って何だよ?」

「そろそろよ。まあ、楽しみにしてなさいな」

 白鳥が含み笑いをしている時は、大抵、良くない。


 

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