8話

 数十分後。

 烏丸がカフェを出た。

 待っていた人が来たらしい。

 道路の隅に、黒い車が止まっていた。高級そうな車だ。

 烏丸は、その車に乗り込んだ。

「おい、車に乗っちゃったぞ、どうする?」

「勿論、追うわよ。……Hey,taxi!」 

 ヘイ、タクシーって……。

 駅前なので、すぐにタクシーが来た。

 白鳥に続いて、おれも急いで乗り込んだ。

「あの黒塗りのベンツを追って頂戴」

「はあ、ベンツ?」

「あの車よ、今、信号で止まっているベンツよ」

 白鳥が烏丸の乗っている車を指して言う。

「ああ、あれか。……お客さん、あれはベンツじゃなくてポルシェですよ」

 高級車=ベンツのイメージだからか。

「そんなことはどうでもいいわ。とにかく、あの車を追って頂戴」

 自分のミスは、華麗に無視する白鳥。

「何故?」

「極秘調査よ」

 ……嘘だ。


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