3話

         ◇


 放課後、おれ達は相談者を教室で待っていた。

 基本、悩み相談は自分たちの教室を使っている。

 そのため、教室に残っている生徒には速やかに撤収してもらっている。プライバシー重視のためだ。

 クーラーが効いた涼しい部屋なので快適だ。

「遅いな」

 相談者は、クラスメイトの部活の後輩らしい。

 バレー部の一年女子とのことだ。

「いつも思っていたことなのだけれどね。この学校って、生徒に少し甘いわよね。だって、部活でも同好会でもない私たちみたいなのにも、放課後に教室を貸してくれるのよ。しかも、クーラー付き」

「生徒を信用してるってことだろ」

 きっと、学校側はおれ達を生徒の悩みを聞く、悩み相談係みたいに思っているのだろう。

「それもそうよね。信用してくれないと困るわよね。別に、問題行動を起こしている訳ではないのだし。お金取って商売をしている訳でもないのだから」

 プチセレブな白鳥には、金は余る程あるのだから。

「そういえば、この前の期末テストなんだけど……」

 嫌な話題が来たと思ったちょうどその時、教室の扉が開いた。

「すみませんっ、遅れましたっ」

 どうやら相談者が来たようだった。

「あら、あなた昨日の……」

 ポニーテールに見覚えがあった。

「昨日の?」

 彼女は知らないだろうけど……。

「あなた、昨日、烏丸君に告白していたでしょう?」

「おい、言うなよ」

きっと傷付いてるはずだ。失恋の立ち直りについて相談に来たのだろう。

「も、もしかして、聞いてましたか?」

「いいえ、聞いてはいないわ。遠目から見えただけ」

「よ、良かった……」

 いや、見られてた時点で良くはないだろ。

「では、自己紹介と相談内容を教えて頂戴。あと、高村君が一緒に居ても大丈夫?」

 男子が居ると話にくい時は、おれは教室から出るのだ。

「はい、大丈夫です。……えっと、一年三組の阿部灯です。バレー部に入ってます……」

 阿部は少し口ごもると、何かを決意したように言った。

「烏丸先輩を調査して欲しいんです!」

「烏丸を調査?」

「私、昨日、烏丸先輩に振られちゃったけど、もっと烏丸先輩のことを知って、もう一度アタックしたいんです。まだ、烏丸先輩のこと、諦められないんです!」

 言葉から、彼女の熱意が伝わってくる。

「ま、まだ烏丸には彼女はいないみたいだし、チャンスはあるよな?」

「そうね。……で、阿部さん、あなたは何で、烏丸君のことを知りたいの?」

 そんなの、決まってるだろ。分かれよ、白鳥。

「え……。えっと、烏丸先輩のことが好きだから……」

「……ふーん」

 さも、どうでもいいような反応であった。

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