今言う?
ナリア「まずは、ギルドで借りた本を読みましょう」
カズヤ「ちょっと待って……」
俺たちは街にある飲み屋へ入り席に座る
昼だというのに人は多く入っている
俺の隣にナリアが座り対面にケールとロイスが座る
俺は収納魔法でしまっていた本を取り出す
ギルドで借りた本だ。見た目はそこまで古くない
本は分厚く辞書を想像させる程の分厚さだ
ナリア「ちょっと借りるわね。はいはい……」
ロイス「何て書かれてあるんだ?」
ナリアが分厚い本を開き、読んでいる部分を指でなぞる
ロイスが真剣な表情で本を読むナリアに酒を片手に尋ねる
もう頼んでるし、呑んでる。先に情報の共有からだって言ったのに
ロイス……人の話は聞いとけよ!!
ナリア「ちょっと!!何もう飲んでるのよ⁉情報の共有が先だって言ったじゃない!!」
ロイス「あぁ、すまん。つい。でも俺、話すこと何も無いからな」
カズヤ「つい、じゃないよ!!」
ナリア「話す事無くても聞くくらい出来るでしょうが!!人の話は聞きなさいよ!!」ボコッ
ナリアが質問してきたロイスの方を見ると酒をゴクゴクと飲んでいた
ナリアがキレるとロイスは悪びれる様子も無く返す
ナリアがさらに怒り、机に立て掛けていた杖を手に取りロイスの頭を叩く
つい酒を頼むやつがどこにいるんだよ!!
そうだった
ロイス「痛ってぇな!!殴ることないだろ!!」
カズヤ「殴られても仕方ないことやってるよ」
ケール「殴られない方がおかしいよ」
ロイスは叩かれた部分を両手で押さえている
杖で叩かれるのは痛いに決まってる
けど、ロイスは自業自得だよ
ロイスはパーティーが絡むと頭のネジが外れる
ロイス「えぇ……?」
ナリア「自業自得よ」
ロイス「嘘だろ……」
ロイスは俺とケールが味方になってくれなくて信じられないといった様子を見せる
味方にはなれないよ。10:0でロイスが悪いもん
ナリアは落ち込むロイスを横目に本の続きを読み始める
あの本はナリアに任せて、俺は街を探索して手に入れた別の本を読んでいよう
俺は収納魔法でしまっていた別の本を取り出す
そこまでページ数があるわけではない
ケール「カズヤ、その本は?」
カズヤ「これはさっき探索して見つけたやつ」
ケール「【チェドリアに潜む魔の手】?」
俺が取り出した本は「チェドリアに潜む魔の手」というタイトル
書店で見かけたから買った本だ
店主曰くチェドリアに拠点を構える
これから向かう場所にあの災いの騎士がいる
いつ出会うかも分からないし、俺たちはあいつらの間で有名人になっている
気をつけなければいつ襲われるか分からない
カズヤ「チェドリアに拠点を構える
ケール「
カズヤ「それはそうだけど……もしかしたらがあるかもしれないじゃん」
確かに災いの騎士の情報は滅多にない
拠点を潰したけど、幹部が誰だとか拠点が具体的にどこにあるかすらも分からなかった
そんな奴らの情報がこんな本に乗っているとは思えないけど、ワンチャンにかけてみたい
もしかしたらという奇跡が起これ!!
カズヤ「【まず
カズヤ「【だが、規模が大きくなるにつれ
カズヤ「【記したように
ケール「
ケールが上手く要約してくれた
このページには
大した情報じゃ無いな。さすがに拠点がどこにあるとか、幹部はどんな名前・容姿をしているかは書かれてないな
奇跡は起こらなかったか。でも、まだページはあるから他ページに賭けよう
――――――
〜1時間後〜
カズヤ「ダメだ。やっぱりこの本ガラクタだった」
ケール「だろうね。最初のページ以降、
カズヤ「【チェドリアに潜む魔の手】っていうタイトルは合ってるけど……俺たちが欲しい情報それじゃないんだよな」
俺は1時間ほど本を読み進めたが特に有益なことが書かれていたわけでも無かった
ほとんど、
【チェドリアに潜む魔の手】より【実録!!
今欲しい情報が書かれているわけでは無かった。高望みし過ぎたな
カズヤ「ナリアはどう?」
ナリア「チェドリアについて詳細に書かれてる。ギルドに置いてある本は違うわね」
カズヤ「それタダで借りられるしね。こっちなんか100アーツ払ってガラクタだよ」
ナリア「仕方ないわ。どこの馬の骨が書いたかも知らない本に高望みは良くないわよ」
著者を馬の骨呼ばわり。まぁ
ナリアが読んでた本にはチェドリアについて細かく書いてある
詳しく教えてもらおう
ナリア「チェドリアの歴史とかが書かれてるけど、私たちが欲しい情報は今のチェドリアのこと」
カズヤ「今のチェドリアが書かれてるの?」
ナリア「えぇ。今のチェドリアは滅んで三年しか経っていないから復興はあまり進んでないみたい。だから、チェドリアのほとんどが更地みたいね」
ナリアが本に視線を向けながら言った
更地がほとんどなら
何もないなら自然と本拠地になるだろう
そして、構成員も増える。チェドリアは
カズヤ「ほとんど更地なら
ナリア「そういうことでしょうね。戦闘は必死ね。アイテムは多く持っていかないと。チェドリアで買えるとは思えないし」
ケール「しっかり準備を整えて行かないとダメだね」
カズヤ「うん。ところで、チェドリアってどうして滅んだの?」
俺が気になったことを言うとナリアが目を丸くして驚く
俺なんか地雷踏んだ?
素朴な疑問が地雷でした、ってパターンですか?
ケール「確か、王の私利私欲が神の怒りを買って裁きを受けて滅んだんじゃ無かったっけ?」
ナリア「ケールの言う通りよ。正確に言うと王が異世界から人を呼び出したせいね」
カズヤ「あっ……(察し)」
王が勝手に異世界から人を呼び出したせいで神の怒りを買いチェドリアは滅んだ
俺やっぱり地雷踏んでたな。ナリアにとってこの話はしたくないことだよな
俺の不注意だった。申し訳ないな
何で滅んだかは分かったが、気になるのが1つある
神は世界に干渉出来ないと言っていた。ケールはあたかも神が滅ぼしたように言っている
矛盾が起きている。何故、神が滅ぼせたんだ?
カズヤ「確認だけど神が滅ぼしたの?」
ケール「そうだったはず」
ナリア「そうね。神の仕業よ」
干渉出来てるじゃないですか……
何で俺に王を殺せって言ったんですか⁉
自分でやれよ!!働け!!
ケール「でもナリア、異世界なんて無いはずじゃ……」
ナリア「あるわよ。私が異世界から来た人間だもの」
ケール・ロイス「「え?」」
ナリア「カズヤもそうよ」
カズヤ・ケール・ロイス「「「えぇぇぇ!!!!」」」
何で言うの!?
バラす必要あった!?
ここ一応店内ですよ!!他の人にバレたらどうするんすか!!!?
酒飲んでないよね!?飲んでないや……え、シラフで言ったの!?
もしかして……さっき地雷踏んだこと根に持ってる?だとしたら土下座します
ナリアのカミングアウトだけで終わるかなって思ったら……
まさか巻き添えをくらうとは
カズヤ「今言う⁉」
ナリア「どうせバレるわよ。なら今言った方が良いじゃない」
カズヤ「いや、だとしても場所が……」
ナリア「聞いてないわよ。ほら」
そう言うとナリアが他の客に視線を移す
普通に飲んでる。こっちに視線を向けてる感じはしない
確かにこちらの会話が聞かれていた、ということはなさそうだ
異世界の話をしていたら気になって視線を向けてくるだろう
ロイス「それ本当なのか!?」
ナリア「嘘偽り無いわよ」
ケール「異世界ってどんな場所!!?」
ケールが目を輝かせて俺とナリアを見てくる
なんて答えればいいんだ?
でも、現実世界なんてこっちの世界より疲れる
ナリア「期待しない方が良いわよ。あっちはケールが思う程良いところじゃない」
カズヤ「うん。期待するだけ損だよ。てか、行かない方が絶っ対良い」
ケール「そ、そうなんだ……」
ケールは俺たちの負のオーラに押されてしょんぼりする
被害者を出さないためだ。致し方無い
ロイス「チェドリアに行くのも何か理由があるのか?」
カズヤ「それはね……」
俺はケールとロイスにチェドリアへ行く必要がある理由を教えた(なるべく小声)
ケールとロイスは信じられないと言った表情を見せる
現地の人からしてみればマラ王国の王がそんなことするわけ無いのか
でも、事実だし……
ロイス「信じがたいが、カズヤが言うなら本当なんだろう。それは許せねぇな。俺は協力するぜ」
ケール「僕も。王がそんな非道なことする人だとは思わなかったけど、カズヤの言う事を信じるよ。」
カズヤ「ありがとう。二人とも」
マジでどうなるかと思ったけど二人は俺のことを信用してくれた
持つべきは信用できる仲間だ
良かったぁ……ナリアの投下した爆弾が爆発しなくて
ロイス「ナリアも大変な人生歩んでるんだな……」
ナリア「そうね。急に異世界に呼び出されて救世主と謳われて、気づけば国は消えてた。死にかけの状態で必死に前を進んで、その結果今がある。あの時諦めなくてよかったわ」
ナリアは目を細めて振り返りながら話す。細めた瞳の中で様々な感情が複雑に入り混じっている
俺より過酷な人生を歩んでるのに、俺のクラスメートを助けるために
やっぱり持つべきは仲間だ
ナリア「辛気臭い話しちゃったわね」
ケール「そんなことないよ。ナリアのことを知れて良かった」
ロイス「何でも相談しろよ。俺たちは仲間だからな」
ナリア「二人ともありがとう。とりあえず飲みましょう。場も白けちゃったしね」
ロイス「待ってたぜ。じゃあ早速飲むか」
ナリア「ロイスはもう飲んでるでしょ」
ロイス「ウッ……」
ロイスのテンションが目に見えて上がってる
単純だなぁ。でもそれくらいパーティーが好きってことだ
さすがはパーティー狂
こういう時間が続いたら人生楽しいだろうな
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